犯罪報道の削除請求(2021版)

2021.04.01

犯罪報道の削除請求

ネットの犯罪報道は、事件後、長期間が経過するなどして公表の必要がなくなった場合には削除請求できます。

かつて実名報道に関し最高裁は、「その者が有罪判決を受けた後あるいは服役を終えた後においては、一市民として社会に復帰することが期待されるのであるから、その者は、前科等にかかわる事実の公表によって、新しく形成している社会生活の平穏を害されその更生を妨げられない利益を有するというべきである」という表現で(最三小判平6・2・8ノンフィクション『逆転』訴訟・上告審,民集48巻2号149頁)、「更生を妨げられない利益」の侵害という構成をとっていました。
その後、「更生を妨げられない利益」侵害などを理由に、グーグルに対し検索結果の削除請求をした事件では、「プライバシー」侵害になるとの考え方で整理し直されています(最三小決平29・1・31民集71巻1号63頁)。

削除の判断基準

上記平成29年決定で最高裁は、「当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合」には削除請求できるとしています。

要約すると、①犯罪事実の性質及び内容、②記事により伝達される範囲と具体的被害の程度、③社会的地位や影響力、④記事の目的や意義、⑤長期間経過後の社会的状況の変化、⑥犯罪事実を記載する必要性、の6つの要素を検討のうえ、逮捕事実を公表しておく必要と、表示しないことにより守られる利益を比較し、プライバシーが優位する場合は削除請求できる、とするものです。

削除できるケース

嫌疑不十分不起訴

不起訴になった理由が「嫌疑不十分」であれば、グーグルの検索結果(東京高決平30.8.10)、ツイッターのツイート(東京高決令2.6.8)など、裁判所が削除請求のハードルを高めに設定している事例でも、削除が認められています。

ブログ記事

嫌疑不十分不起訴でなくても、検索結果ではなくブログ等であれば、長期間経過などの事情が考慮され、削除が認められています。

名古屋高決令3・3・30は、グーグルの運営するブログにおける逮捕記事について、「一定の諸要素を比較衡量し、プライバシーに属する事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に削除を認めるべきとされる平成29年決定の判断枠組みを用いて」判断することが相当である、と判断基準を示したうえで、「既に6年以上が経過し、略式命令に基づく罰金を納付した時から約5年半が経過しており、抗告人はその間に罰金以上の刑に処せられることがなかったから、その刑は消滅している」として、削除を認めています。

刑の消滅という判示があることから、罰金刑なら5年、それ以上の刑が執行されていれば10年が一応の目安になります。
刑の消滅ではありませんが、執行猶予期間の満了も、一つの目安になる可能性があります。

サイト管理者の判断での削除

サイト管理者に対してメールやオンラインフォームから削除請求する場合には、裁判所の手続を使う場合と異なり、より緩い判断基準で削除してもらえる場合があります。サイト利用規約違反によっても削除されます。

どのくらいの期間が必要か

事件からどのくらいの期間が経過すれば削除できるかという問題について,法律はありません。平成29年の最高裁決定以前の東京地裁9部の運用では,3~5年となっていた印象ですが、今では、あと数年長いはずです。

なお、当時も、執行猶予期間中は削除が認められていませんでした。


  • 2015/03/17 作成
  • 2021/04/01 04/02 更新(情報アップデート)