グーグルの口コミの削除・開示請求(2020版)

2020.07.05
グーグルの口コミ対策

Googleの口コミとは?

Googleのクチコミ

グーグルの検索結果の右側に「Googleのクチコミ」と表示されている部分をクリックすると、その施設・企業・店舗などに関する口コミが表示されます。グーグルマップにも同じものが表示されており、「グーグルマップの口コミ」とも言われています。

グーグルアカウントがなければ口コミが書けないものの、グーグルアカウントは1人でいくつも作れるため、嫌がらせに利用されたり、営業妨害に使われるケースもあります。

グーグルの口コミの削除請求

グーグルの口コミは、ウェブフォームから削除請求できます。このフォームで要求されている「クチコミの旗マーク」は、標準では表示されていません。「★★★★★ ○か月前」と表示されている部分にマウスポインタを近づけると、右端に表示されます。

また、「Googleマイビジネス」に登録していれば、Googleマイビジネスの管理画面、窓口からも削除請求ができます。

相談者の体験談を聞いている限りでは、Googleマイビジネスの窓口から削除請求したほうが、削除してもらえる可能性が格段に高いという印象です。それでも、オンラインフォームからの請求はグーグルの社内判断を求める手続のため、強制力はなく、削除してもらえないものは残ります。

削除仮処分での削除請求

オンラインフォームからの請求で削除してもらえなかったときは、裁判所の「削除仮処分」手続による削除請求という方法もあります。たいていのケースでは、「名誉権侵害(名誉毀損)」を理由として、削除請求することになります。

削除仮処分は、個人ならば住民票の住所、法人ならば本店所在地を管轄する地方裁判所に申立てをします。米国のGoole, LLCを呼び出して(日本の弁護士が代人になります)審理し、裁判官が削除相当だと考えた場合には削除決定(削除の命令)が出ます。

グーグル本社が命令に従わない場合の実効性という問題はありますが、現在のところ(2020/5)、グーグルが削除仮処分決定に従わなかったという話は聞いたことがありません。

期間的には、まったくグーグル側が争わなければ、申立てから2か月程度で削除される計算になります。ただ、実際にはかなり法的に争ってきますので、もう数か月見ておく必要があります。

地裁が削除を認めなかったとき

地方裁判所が削除仮処分の申立てを認めなかったときは、「却下決定」が出ます。この場合、申立人側では、高等裁判所へ異議申し立てするために、「即時抗告」という手続ができます。申立期間は14日以内です。

高等裁判所も認めなかった場合には、最高裁への異議申立の手続(特別抗告と許可抗告)も用意されていますが(こちらは5日以内)、憲法違反や判例違反がないと申立てできないため、事実上、高裁の即時抗告で終わると考えておくのが良いでしょう。

グーグルの口コミの発信者情報開示請求

誰が口コミを書いたのか特定したいときは、発信者情報開示請求という方法を使います。オンラインフォームからの請求方法はないため、こちらは裁判所の「発信者情報開示仮処分」か「発信者情報開示訴訟」のどちらかになります。また、米国裁判所でのディスカバリ制度も利用できます。

発信者情報開示仮処分

最も利用されているのが、発信者情報開示仮処分の手続です。口コミの投稿に使用された「IPアドレス」を開示請求する方法です。管轄は民事訴訟法の規定により、東京地裁にしかありません。

開示されるIPアドレスはログインIPアドレスなので、東京地裁では「口コミの投稿直前」のIPアドレスしか、開示仮処分を認めていません。「投稿直前のIPアドレス」というように、目録に記載するよう指示されます。
以前は、グーグルは投稿に使用されたIPアドレス(POSTのIPアドレス)も記録していましたが、昨年あたり(2019)から、ログインのIPアドレスしか保存しない運用になったようです。

IPアドレスの開示仮処分も、削除仮処分と同じく、申立てから最短で2か月程度で開示されます。IPアドレスが開示されたあとは、別途経由プロバイダに対して投稿者の開示請求をして、投稿者の「住所・氏名」を開示してもらう流れになります。

グーグルからの通知

発信者情報開示仮処分の決定が出ると、グーグルから投稿者に対してメールで通知が送られます。差出人はusernotice@google.com、メールのタイトルはNotice from Googleとなっている英文です。

From: usernotice@google.com
Subject: [X-XXXXXXX] Notice from Google
Google has received a Court Order for the disclosure of information related to your Google account.

このメールには、異議申立をして申立書の写しをグーグルに送信するように、といったことが書かれていますが、日本のプロバイダ責任制限法には、そういった制度がありません。したがって、これは単に、仮処分決定が出たのでIPアドレスを開示します、くらいの意味だと考えてください。このあと、プロバイダから意見照会が来ると予想されます。

接続先IPアドレスは無数にあり特定できない

ところで、仮にグーグルに対するIPアドレス開示仮処分決定が発令されても、次に「接続先IPアドレス」の問題が待ち構えています。KDDI、ソフトバンク、UQなどは、通信の特定のために接続先IPアドレスを要求してきますが(固定回線の場合は要求されないケースもあります)、グーグルのログインIPアドレスは、accounts.google.comに接続したIPアドレスです。そして、正引きすると分かりますが、zccounts.google.comに対応するIPアドレスは無数にあります。そして近時(2020/05以降)ソフトバンクは、接続先IPアドレスをサイト管理者から開示してもらわない限りログを調査しないと言い出しています。

したがって、接続先IPアドレスをプロバイダから要求されたときは、事実上、特定不能になると考えられます。

発信者情報開示請求訴訟

グーグルはグーグルアカウントの情報しか持っていませんので、「仮処分」ではなく「訴訟」をしても、開示できる情報は「メールアドレス」に限られます。

しかし、最近の裁判例では、SMSメールアドレス(つまり、携帯電話番号)が「メールアドレス」として開示請求の対象になるというものがありますので(東京地判令元・12・11裁判所HP)、携帯電話番号を開示できる可能性があります。携帯電話会社に対して、契約者の住所氏名を開示請求すれば、投稿者が特定できる可能性があります。

なお、携帯電話番号の開示請求については、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会(第1回)」(2020/4/30)でも検討事項としてあげられており、今後は、省令改正により、携帯電話番号の開示請求ができるようになるかもしれません。

もちろん、グーグルアカウントに携帯電話番号が登録されていなければ、開示されません。

被告は米国法人のため、訴訟の開始に時間がかかりますが(5~8か月ほど)、そのあとの手続は、日本のプロバイダに対する開示請求訴訟と同じ流れです。

米国のディスカバリ制度

携帯電話番号を、より短期間で調べる方法としては、米国裁判所のディスカバリ制度を使う方法があります。早ければ、申立ての翌日に裁判所の決定(grant)が出るケースもあります。グーグルは、裁判所の決定が送られたあと、必要な手続をして、1か月程度でグーグルアカウントの情報を開示してくれます。

開示される情報としては、二段階認証の携帯電話番号、リカバリ用のメールアドレス(プロバイダメールなど)、Gメールアドレスのほか、アカウント作成時のIPアドレス、最終ログインのIPアドレスなどがありました。
そのため、このIPアドレスをもとに、経由プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟をすることも可能です。

One Star Assassin(星1つの暗殺者)

海外で、「★1つ」を付けるだけの暗殺者に関する研究があると、情報ネットワーク法学会の発表で知りました。たしかに、グーグルの口コミでは、「★1つ」を付けるだけで、対象の企業を抹殺できる可能性があると思うと、うまい表現だと思いました。

では、One Star Assassinに対しては、どのような反撃が可能でしょうか。まず、日本の名誉毀損法理では、「★1つ」であっても、対象者の社会的評価は低下させるので、名誉毀損にはなり得ます。

しかし、通常、「★1つ」は何らかの前提事実に基づく意見論評だと考えられるところ、何も口コミが書いてないと、前提事実の反真実性は立証できません。そのため、日本の裁判所の手続は、削除・発信者情報開示請求は難しいということになります。

ただし、米国のディスカバリ制度を使って、投稿者を特定できた事例はありますので、当該投稿者に対し、口コミを削除して欲しいと依頼するなどして、削除の目的を達成できる可能性はあります。

  • 2015/4/12 作成
  • 2020/5/24 更新
  • 2020/07/05 更新