開示されたあとはどうなるか

プロバイダから「発信者情報開示請求訴訟で敗訴したので」「裁判所に命じられたので」という理由で「あなたの住所氏名を原告に開示しました」という通知がきたら、次は、裁判所から「損害賠償請求訴訟」の「訴状」が届くかもしれません。特別送達という特別な形式の郵便で、手渡しで届きます。
不在のときは、郵便局に取りに行く必要があります。もし期限内に取りにいかないと、次は「夜間休日送達」といって、夜または休日に、郵便局の人が届けに来ます。それでも不在だと、最終的には、普通の郵便と同じように届きます(付郵便送達)。

確認するもの

封をあけたら、まずは「第1回口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」と記載されている書面を確認してください。この書類に書かれていることで重要な情報は以下のものです。

項目名意味
期日第1回の裁判が実施される日です。地裁であれば、被告側は第1回期日に限り、答弁書を出して欠席できます。
出頭場所第1回の裁判が実施される法廷です。自分で行く場合は、ここに行きます。弁護士に依頼する場合は弁護士に伝え、自分は行く必要がありません。
答弁書提出期限「答弁書」と呼ばれる書類の提出期限です。第1回期日の1週間前に設定されています。もっとも、期限を守らず、当日に持ってくる人もいます。第1回の被告側は、準備期間が短いため、いわゆる「形式答弁書」と呼ばれる、簡単な書面でも許されています。
事件番号令和x年(ワ)第xxxx号といった形式になっています。他の事件と区別する番号であり、裁判所に電話で問い合わせする際、この番号を書記官に伝えると、話が早くなります。

訴状では「請求の趣旨」を確認する

慰謝料請求訴訟では、原告がいくら欲しいと言っているかが「請求の趣旨」というところに書かれています。文章としては、「被告は、原告に対し、金xxx万円及び、令和x年x月x日から支払済みまで、年3パーセントの割合による金員を求める」という形式になっています。「年3パーセントの割合による金員」は改正民法の法定利率(民404条2項)での遅延損害金(民419条1項)です。投稿日が令和2年4月1日以前であれば、「年5パーセント」になっているはずです。

この部分には、300万円、500万円、1000万円といった金額が書いてあるのだろうと想像しますが、多く書けばそれだけ認められるというものでもないため、金額が大きくても驚かないようにしましょう。

330万円、550万円、1100万円など、1割増しになっている金額であれば、増えているのは弁護士費用の分です。実際に弁護士に支払った金額という意味ではなく、慰謝料の1割を弁護士費用として請求して良いという裁判例にしたがった金額設定です。弁護士の着手金が実際には20万円でも、500万の慰謝料を請求する場合は50万円と記載してよいことになっています。ただしこちらも、多く書けばそれだけ認められるというものではなく、実際に認められる金額の1割に減額されます。

逆に、あまりに大きな数字が書いてある場合は、「不当訴訟」として慰謝料請求の対象になることもあります。

まず「権利侵害」を争う

原告は、被告を訴えるまでに、①IPアドレスの開示仮処分と、②住所氏名の開示請求訴訟という、2つの裁判手続を経ているのが一般的です。そして、被告の住所氏名にたどりついているのですから、2人の裁判官が、あなたの書いた投稿を違法だ、権利侵害がある、と認めていることになります。

しかし、慰謝料請求訴訟では、まずは権利侵害から争う余地があります。なぜなら、IPアドレスの開示を命じた裁判でも、住所氏名の開示を命じた裁判でも、プロバイダ側は、有効な反論をしていない可能性があるからです。プロバイダは、あなたが投稿した内容の真偽を知りませんので、訴訟活動にも自ずと制限があります。また、裁判官としても、さっさと投稿者を訴えて、そっちでちゃんと戦えと思っているようです。そのため、プロバイダは敗訴しがちなのです。

そのため、まずは「私の書いた投稿は真実であり名誉毀損ではない」などなど、権利侵害性を否定して争うべきです。

次に慰謝料額を争う

権利侵害を否定して争ったあとは、「慰謝料額」についても争いましょう。200万、300万といった数字が「請求の趣旨」に書いてあっても、実際にはそんな金額は認められません。判例相場があり、最近(2020年)は個人の名誉毀損なら30万、50万、70万といった判決が多いような印象です。

金額に対しては、裁判例を引用しつつ、そんな高額にはならない、という主張をして争うべきです。

事業をしている人の場合、「この投稿のせいで仕事が減った」といって、逸失利益を求めてくることもありますが、その投稿のせいで仕事が減ったのかどうか、因果関係があるかどうかが不明なので、原告の思うようには認定されません。逸失利益を請求されていたら、「因果関係がない」と反論すべきです。

最後に「調査費用」を争う

発信者情報開示請求訴訟のあとの慰謝料請求訴訟では、原告はきっと「調査費用」も請求してくることでしょう。これは、発信者情報開示請求にかかった弁護士費用を投稿者に請求するものです。

東京高裁判決には、「調査費用は1割しか認めない」というものもあり、まだ運用の固まっていない費目です。全額請求されていたら、そんなには認められないはずだといって反論すべきです。
また、本当にその金額を払っているのか、弁護士の領収書と契約書も提示してもらいましょう。文書提出命令といった制度も活用しましょう。
たとえば、10投稿分の料金が30万円という契約になっていたら、1投稿分の値段は3万円です。調査費用を投稿数で割って認容するという裁判例も珍しくありません。また、開示手続を始める前に払った費用なのか、投稿者を特定したあと払った報酬なのかによっても、「調査費用」としての意味合いが変わるはずです。

進行に応じて訴訟上の和解もする

上記の活動がうまくいけば、裁判官から「10万円で和解しなさい」などという言葉が得られ、この時点で、裁判の行方を占うことができます。

1円も払いたくない、というのでもなければ、裁判所の誘導に乗って和解するのも1つの手でしょう。和解条項については、以下の別記事をご覧下さい。

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業務内容着手金(税別)
被告側での応訴200,000円
閲覧制限申立(1回あたり)50,000円
出廷日当(東京以外1回あたり)30,000円~50,000円
  • 2020/05/30 作成
  • 2020/09/22 最終更新