ヤフーに対する検索結果削除請求訴訟(京都地裁)

2014.08.07

京都地判平成26年8月7日

「大手インターネット検索サイト「ヤフー・ジャパン」で自分の名前を検索すると過去の逮捕記事が表示され、名誉を傷つけられたとして、京都市の40代男性が同サイトを運営する「ヤフー」(東京都港区)に対し、検索結果の表示中止や慰謝料など約1100万円を求めた訴訟の判決で、京都地裁は7日、人格権が違法に侵害されたとは認められないなどとして、請求を棄却した。」
(出典:毎日新聞:http://mainichi.jp/select/news/20140807k0000e040264000c.html)

検討

本件は京都の弁護士さんが代理人となって提訴されたものですが,関西圏のメディア数社から事前取材があり,判決日には,実際に出た判決の内容と,「忘れられる権利」の議論への影響を検討しました。
以下,箇条書きですが,検討結果のメモです。

1)逮捕から1年半(執行猶予期間中)なので公益性があり違法性が阻却される,という結論はおそらく妥当
 東京地裁民事9部の削除仮処分でも,執行猶予期間中は公益性を優先し,削除決定が出ない印象
2)判決は,ヤフーに不法行為責任が成立しない,という不法行為論を検討したものに過ぎず,一般論としての検索結果の削除義務については,何も判断していない
(一般論としての削除義務について言及はない)
 したがって,今後の同種事件に与える影響は小さいと考えられる
3)判決は,検索サービスの仕組みは被告が構築したもの,と判示しているが,これはEU最高裁判決にも似た表現があり(「個人データ収集の目的と手段はグーグル自身が決定したもの」という表現がある),忘れられる権利に親和性があると捉えることも可能

なお,本件については,誰が原告で,どの記事が削除請求対象なのか,という探索と元記事の拡散が始まっているようです。いまだ公益性のある記事と判断されたとはいえ,疑問に思うところではあります。