名誉感情侵害(侮辱)

2020.05.21

名誉感情侵害(侮辱)とは

民事の「侮辱」は、刑事の「侮辱罪」と異なり、保護法益は個人の名誉感情です。最高裁は、「民法七二三条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価すなわち名誉感情は含まないものと解するのが相当である」として(最二小判昭45・12・18民集24巻13号2151頁)、名誉感情について「人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価」と定義しています。簡単に言うと「プライド」です。

名誉感情侵害(侮辱)の成立要件

名誉感情侵害は、「社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合に初めて被上告人の人格的利益の侵害が認められ得る」(最三小判平22・4・13民集 64巻3号758頁)と判断されており、判断基準は「社会通念上許される限度を超える」か否かです。

裁判例では、「バカ」くらいのレベルでは侮辱は成立せず、「死ね」であれば状況次第では侮辱だと判断されています。そのほかには、放送禁止用語のようなレベルの言葉を使っていると、侮辱だと判断されやすくなります。

具体的事実の指摘の要否

開示訴訟で侮辱の主張をすると、プロバイダは「根拠」や「具体的事実」が書かれていない「意見」だから違法ではないと反論してきます。これは、上記の最三小判平22・4・13が、「特段の根拠を示すこともなく,本件書き込みをした者の意見ないし感想としてこれが述べられていることも考慮すれば,本件書き込みの文言それ自体から,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず」という書き方をしているためです。

しかし、この判例は裁判外で発信者情報開示請求を受けた経由プロバイダの「重過失」に関する判断基準を示したものです。つまり、“特段の根拠”を示していないから、経由プロバイダにおいて違法性が「一見明白」とはいえない、ゆえに発信者情報を開示しなかったことに重過失があるとはいえないという判断であり、侮辱の判断に「一見明白」性や、具体的根拠が必要だという判断基準ではないのです。

実際、具体的根拠が示されていないとして侮辱の成立を認めなかった地裁判決に対し、控訴審が侮辱の成立を認めた例もあります。