名誉権・プライバシー権侵害を理由とする削除請求
省庁のサイトに記載された情報を名誉・プライバシー等に基づき削除請求する場合も,手続は民間サイトを相手にする場合と同じです。まずは任意請求の方法を試し,任意での削除に応じてもらえない場合には,削除仮処分,削除訴訟といった法的措置を利用します。省庁のサイトを対象に削除請求する場合,仮処分の債務者,訴訟の被告は「国」になり,「国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律」1条により,法務大臣を国の代表者とします。
東京地裁平成28年2月19日判決(westlaw:2016WLJPCA02198006)
消費者庁のサイトに行政処分歴の公表されていた原告2名が,削除請求した事案のようです。行政処分が平成22年12月17日,事件番号が平成27年となっていますので,4年程度の時間経過だと想像されます。この事案について,東京地裁は「本件各記事によって公表されている事実は,行政機関の諸活動に関する透明性を確保するとともに,国民に対する注意喚起を促して消費者保護や再発防止等を図るという行政目的を達成するために必要最小限度のものにとどまり,公表の方法,態様も,上記目的を達成するために必要かつ相当なもの」として,請求棄却としています。
ただ,検索してみると分かりますが,消費者庁のサイトでは,すでに,この行政処分の情報は読めなくなっています。「特定電子メール法第7条に基づく措置命令一覧(消費者庁設立以降~平成25年3月末現在)」(http://www.caa.go.jp/trade/pdf/130331premiums_2.pdf)には複数のURLが記載されていますが,一定程度過去のものは表示されません。
仮処分手続における和解
省庁のサイトに掲載されていた4年前の行政処分歴について,削除仮処分の方法により,削除を求めてみました。そうしたところ,国は「和解での解決」を提案してきました。当該情報を削除する代わりに,本案訴訟等はしない,という和解内容です。その提案どおり,当該情報は数週間で削除され,事件はスピード解決しました。
上記の東京地裁判決と似た事案にもかかわらず,結果が逆になっています。
おそらく,「国」の中でもサイトに掲載した情報を何年で消すかについて,方針が固まっていない時期なのだと思われます。
なお,「Webサイト等による行政情報の提供・利用促進に関する基本的指針」(各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定,平成27年3月27日)別紙では,「報道発表資料」の「掲載期間は,特段の別途の定めがない場合は,公表後3年間を基本とする」とされています(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/cio/dai61/honbun2.pdf)。