インスタグラムの開示請求(2022/08版)

2022.08.24

削除・開示仮処分の相手

Instagramに関する削除・発信者情報開示請求は、米国法人META PLATFORMS, INC.を債務者として申立てをします。ヘルプ(https://help.instagram.com/581066165581870)には「Instagramサービスは、Meta Platforms, Inc.が提供するMeta製品の一つです」と記載されています。

同社は2022年8月、日本で外国会社の登記をしたので、日本法人と同じようにして仮処分申立ができます。翻訳も海外送達も不要です。

発信者情報目録

Instagramのログは、写真もコメントもアカウントに紐付いているため、発信者情報目録でもアカウントを特定する必要があります。Instagramの場合、以下の書式を指定されます(旧法下の表現)。対象のユーザーアカウントが複数あるときは、別紙アカウント目録を作るか、下記ユーザーアカウントとして、アカウント名を列記します。ユーザーアカウントは「URL」で特定してもらいたいと言われましたが、アカウント名でも開示できるそうです。

○年○月○日におけるユーザーアカウント「user_account」について、○年○月○日以降のログインに関する年月日、時刻及びアイ・ピー・アドレス。ただし、当該情報が入手可能であるものに限る。

改正法のもとでは、侵害関連通信以外の開示請求が認められないため、以下のような書き方になります。

1  アカウント情報
 別紙投稿記事目録記載のアカウントに登録されている以下の各情報。ただし、当該情報が入手可能であるものに限る。
(1) 電話番号
(2) 電子メールアドレス

2  侵害関連通信に関する情報
 別紙投稿記事目録記載のアカウントに関する以下の各情報。ただし、当該情報が入手可能であるものに限る。
(1)  アカウントの作成に使用されたIPアドレス及びアカウント作成日時。
(2)  アカウントについて、●年●月●日以降のログインに使用されたIPアドレス及びログイン日時であって、投稿日時及び当該日付の直前のもの。

当事者目録

外国会社の登記から、住所、日本における代表者を抜き出し、さらに、日本における代表者ビーコンサービス株式会社の代表取締役名も記載します。そのため、裁判所へは、外国会社Meta Platforms, Inc.の登記と、日本における代表者ビーコンサービス株式会社の登記を提出する必要があります。

以下の記載例の中で、(送達先)とあるところは、開示命令申立事件では(送付先)としてください。

アメリカ合衆国19808デラウェア州ウィルミントン、リトル・フォールズ・ドライブ251
債務者 Meta Platforms, Inc.
上記代表者日本における代表者 ビーコンサービス株式会社
上記代表者代表取締役 マリア-ベゴーニャ・ディアドラ・ファロン・ファルージャ
東京都千代田区丸の内一丁目8番3号丸の内トラストタワー本館26階(送達先)

決定後の開示

開示決定が発令されたあとは、1~2週間後に、債務者代理人からFAXでIPアドレスとタイムスタンプ(UTC)が届きます。日本時間に変換して利用してください。

Instagramの投稿日時問題

開示されるIPアドレスは、上記目録のとおり、ログイン時IPアドレスです。そうすると、近時の東京地裁の裁判例からすると、「投稿日時」がいつなのか?が問題となります。投稿日時の直前のログイン(侵害関連通信:改正法5条3項)がどれなのか特定する必要があるためです。

投稿日時は問題とならないという見解

何人かの弁護士にヒアリングしたところ、Instagramでは「なりすまし」などの事例が多いため、どのログイン時IPアドレスで開示請求をしても良く、投稿日時は事実上問題とならない、という見解の人がいました。

電話番号の開示請求訴訟をするという見解

また別の弁護士は、電話番号とメールアドレスの開示請求訴訟をするので、IPアドレスからたどる方法は重視していないと言っていました。

そのためか?、インスタのIPアドレス開示仮処分では、電話番号とメールアドレスの消去禁止仮処分を付けておく弁護士が多いと書記官が言っていました。

投稿日時は開示してもらえない

そもそもFacebook側に投稿日時を開示してもらったらどうか? と思いつきますが、開示してもらえなかった、という弁護士もいました。

投稿日時はHTMLソースに書かれている

Google Chromeでは、投稿日(「●日前」と書かれているところ)を右クリックして、表示されるメニューで「検証」をクリックしてください。この方法で、投稿日時が判明します。投稿日時の最後「.000」の次に「Z」と書かれているのは、UTCを表していますので、9時間たして日本時間にしてください。

(以前の記事)

(注:以下は記事作成当時の方法です。現在は、この方法では投稿日時は分からないと言われています。)
実は、Instagramの写真とコメントの投稿日時は、HTMLソースを見れば分かります。UNIXタイムスタンプの形式で書かれています。UNIXタイムスタンプは、1970年1月1日0時0分0秒からの経過秒数です。

以下の例をもとに説明します。この例では、写真の投稿日時は「2020/10/25 6:16」(JST)、1つ目のコメントの投稿日時は「2020/10/25 6:18」(JST)です。説明の便宜のため、コメントの内容として日時を書いています。

このページのHTMLソースには、以下のように記載されている部分があります。

  • “taken_at_timestamp”:1603574206
  • “created_at”:1603574298

このうち、「”taken_at_timestamp”:1603574206」のほうが写真の投稿日時、「”created_at”:1603574298」のほうがコメントの投稿日時です。コメントが複数あるときは、「created_at」が複数あります。

UNIXタイムスタンプからの変換

上記の数字が、それぞれ日時を表しています。UNIXタイムスタンプを普通の日時に変換するには、変換サイト(https://keisan.casio.jp/exec/system/1526004418など)を使います。

写真コメント
実際の投稿日時(JST)2020/10/25 6:162020/10/25 6:18
UNIXタイムスタンプ16035742061603574298
UNIXタイムスタンプ
からの変換結果(UTC)
2020/10/24 21:16:462020/10/24 21:18:18
UNIXタイムスタンプ
からの変換結果(JST)
2020/10/25 6:16:462020/10/25 6:18:18

このように、秒までの値がHTMLソースに記載されていると分かります。

Instagramの接続先IPアドレス

Instagramの接続先IPアドレスがどこなのか、という問題についても考えねばなりません。実際にログインして、Chromeのデベロッパーツールで確認したところ、ログイン情報がPOSTされているサーバーは、「www.instagram.com」のように見えました。そのほかには、「graph.instagram.com」も関係している可能性があります。

接続先IPアドレスは、これを正引きした値のうちいずれかになります。
IP Ver.6のIPアドレスの中に「facebook」のように読める値があるのは、おもしろいものです。

www.instagram.com31.13.77.174
31.13.82.174
69.171.250.174
157.240.3.174
157.240.209.174
2a03:2880:f20f:e5:face:b00c:0:4420
2a03:2880:f24e:e0:face:b00c:0:4420
graph.instagram.com31.13.77.63
31.13.82.52
69.171.250.63
157.240.3.63
157.240.209.63
2a03:2880:f20f:c4:face:b00c:0:43fe

対ドコモ

ドコモにログ保存仮処分をしたところ、上記の接続先IPアドレスのうち、「graph」のほうでアタリがあったようです。ただ、条件に合う通信が30数件、契約者数で4~5件のアタリがあって、投稿者を特定できない、という回答でした。
また、ドコモは「侵害情報」直前のログインIPでなければ通信を調査しない(仮処分決定がなければ)という方針のようなので、侵害情報の日時の調査が重要です。


  • 2020/10/26 作成
  • 2021/02/03、02/11、2/25、3/12 更新
  • 2021/12/5 更新(Facebook→Meta Platforms 社名変更)
  • 2022/08/24 外国会社の登記に対応
  • 2022/11/01 暫定措置として、投稿日時の調べ方を追記
  • 2022/11/17 改正法での目録を追記