ネット誹謗中傷の対応法

2015.02.01

 ネットでの誹謗中傷問題は,「削除請求」または「投稿者の特定」(発信者情報開示請求)により解決できる可能性があります。


1 誹謗中傷記事の削除

(1) 掲示板管理者,ブログ管理者への削除請求

1-1 サイト管理者が分かる場合

 サイトの管理者が分かる場合は,メール,削除依頼フォーム,内容証明郵便,「送信防止措置依頼書」という書面等により,削除請求を出します。
 サイト管理者が任意に対応してくれる場合,早ければその日のうちに削除してもらえます。

1-2 サイト管理者が分からない場合

 サイト内にサイト管理者の連絡先が書かれていなかったり,削除ボタン等が用意されていない場合は,ドメインの登録者あてに上記の削除請求をします。

(2) サーバー管理会社への削除請求

 サイト管理者が分からない場合は,サイトのIPアドレスからサーバー管理会社を調べて,サーバー管理会社に削除請求を出します。

(3) 裁判所での削除仮処分

 サイト管理者,サーバー管理者が任意で消してくれない場合や急ぐ場合は,裁判所に「削除仮処分」を申し立てます。
 サイト管理者やサーバー管理会社に裁判所へ来てもらい,投稿者の反論を聞くこともできます。しかし,「仮」の削除処分なので,裁判所の結論も早く出ます。裁判所が認めれば,早いときは約10日~2週間ほどで削除されます。

2 検索結果の削除

 元の記事が消せない場合でも,グーグルやヤフーといった検索サイトに表示される「検索結果」だけを削除請求する方法もあります。
 元の記事が残っていても,人目に触れる機会が減るため,ネットでの誹謗中傷対策として有効と考えられます

3 投稿者の特定

(1) 掲示板管理者へのIPアドレス開示請求

 まず,掲示板やブログの運営会社(サイト管理会社)に対し,誹謗中傷記事のIPアドレスを開示請求します。
 方法は,「発信者情報開示請求書」という書面か,裁判所の「発信者情報開示仮処分」です。「IPアドレス開示仮処分」,「IP開示仮処分」とも呼ばれます。

(2) 接続プロバイダへの住所氏名の開示請求

 サイト管理会社からIPアドレスが開示されたあとは,そのIPアドレスの登録者である接続プロバイダ(たとえば,NTTドコモやソフトバンク)に対して,投稿者の住所氏名の開示請求訴訟をします。

(3) ログの保存請求

 接続プロバイダの通信記録は3か月~6か月ほどで自動的に消去されるため(ログ保存期間),IPアドレスが開示されたあとに,「通信記録(ログ)を消さないで欲しい」と請求しておくとよいでしょう。
 電話を1本いれるだけで保存してくれる接続プロバイダもありますが,法的措置で保存してもらう場合には,「発信者情報消去禁止仮処分」,別名「ログ保存仮処分」という仮処分をします。

(4) 投稿者に対する通知

 発信者情報開示請求があると,接続プロバイダは投稿者に対し,「開示してよいかどうか」を確認する手続を取ります。
 この手続を「意見照会」といいます。意見照会があると,最終的に開示されなくても,誹謗中傷に対する抑止力となる場合もあります。

4 投稿者への請求

(1) 任意交渉

 一番ゆるやかな方法は,任意交渉です。投稿者に事情を説明し,誤解をとき,和解し,もう二度と書かないという約束ができるかもしれません。同じことを裁判所でする場合には,調停手続を利用します。

(2) 損害賠償請求

 名誉毀損(名誉権侵害)やプライバシー侵害,名誉感情侵害(侮辱)を理由とした,慰謝料請求です。
 相手が応じない場合,最終的には慰謝料請求訴訟になるでしょう。認められる慰謝料は事案によって異なりますが,ネットの誹謗中傷の場合,判例検索をすると5~120万ほどの慰謝料が認められています。また,投稿者の特定に要した弁護士費用を加算する,という東京高裁の裁判例もあります。

 

(3) 刑事告訴

 名誉毀損罪,業務妨害罪などの犯罪であれば,刑事告訴も選択肢の1つです。ただし,警察の対応は事案によります。