コロナ感染への中傷禁止、和歌山県が条例 削除を促す(朝日新聞2020/12/17)に取材協力

2020.12.18

和歌山県議会は17日、新型コロナウイルスに関する誹謗(ひぼう)中傷を禁止する条例案を可決した。インターネット上で感染を言いふらしたり、名誉を傷つけたりする投稿をした人に削除を促すほか、プロバイダーに削除協力を求めることなどが盛り込まれている。

https://digital.asahi.com/articles/ASNDK5QJTNDKPXLB00N.html

条例の名前は、「和歌山県新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等対策に関する条例」というそうです。ネットで検索したところ、パブコメの結果は公表されていましたが、条例そのものは出ていないようです。

条例第2条2項では、「この条例において『新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等』とは、新型コロナウイルス感染症に感染したこと若しくは感染したおそれがあること又は新型コロナウイルス感染症を防止するための対策を適切に講じていないことについて、これらの事実があることを理由として、その事実の有無にかかわらず誹謗中傷し、若しくはその事実を殊更に摘示することにより不当に名誉を毀損し、又は本人(当該本人が未成年者又は成年後見人の場合にあっては、その法定代理人)の同意を得ることなく公表されていない情報を不当に公表する行為をいう」と定義されています。

そして条例第3条では、「何人も、次に掲げる方法のいずれかにより、新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等を行ってはならない」とされています。インターネットへの書き込みは3条1号です。

2条2項における「感染したこと」「感染したおそれがあること」は感染歴というプライバシーですから、プライバシー侵害するなという話なので理解できます。

問題は、2条2項の「対策を適切に講じていないこと」のほうです。「あの店でクラスターが発生した。対策を適切に講じていなかったようだ」というツイートが禁止されるのか? という疑問が生じます。「誹謗中傷し」という表現が抽象的で不明瞭なことも気になります。「不当に名誉を毀損し」という限定があるので、違法性阻却事由がないことまで要件としているようにも思われますが、プロバイダ責任制限法の「権利侵害の明白性」要件に比べると、表現が弱い印象です。「不当に名誉を毀損」とあるということで、合憲限定解釈はできるのかもしれませんが、条文の書きぶりが、不明瞭ではないかと思うところです。

上記のような話が、コメントとして掲載されています。