将来の中傷投稿禁止(毎日新聞R3.4.8朝刊)に取材協力

2021.04.08

将来の中傷投稿を禁じる決定 東京地裁立川支部

ブログに反社会的勢力と関係があると投稿された東京都の男性が、投稿をやめるよう求めた仮処分申請で、東京地裁立川支部(平井美衣瑠裁判官)が、将来にわたって同様の投稿を禁じる決定を出した。既にある投稿を削除する司法判断は定着しているが、将来の投稿への差し止めが認められるのは、表現の自由を脅かす恐れもあり異例。ネット中傷が社会問題化する中、専門家は「被害者の救済につながる決定だ」と評価する。

https://mainichi.jp/articles/20210407/k00/00m/040/343000c

妨害予防請求権としての投稿禁止請求権

ネット記事の削除請求権は、人格権侵害差止請求権とも言われますが、人格権侵害の差止請求には、現在の差止(削除)と、将来の差止(投稿禁止)とがあります。民法の物権的請求権の、妨害排除請求と妨害予防請求に対応したものです。

このうち、妨害排除請求=現在の差止=削除は認められ易いのですが、妨害予防請求=将来の差止=投稿禁止は、なかなか認められません。判例データベースなどで調べても、数例しか出てきません。

というのも、将来の差止請求は、表現の自由に対する抑止効果が強いので、よほど明確な危険(妨害発生の蓋然性)がなければならず、裁判所も慎重になるためです。

今回報道された事件は、事例を読む限り、妨害発生の蓋然性がとても高かったように見えます。そのため、取材のコメントでは、「1つの解決策になり得る」と書かれていますが、どの事例にも応用できる手段ではないと思います。


  • 2021/4/8 作成