ログイン時IPアドレス

2021.04.26

掲示板などに投稿(POST)した際のIPアドレスではなく、当該サイトにログインした際のIPアドレス。ログインIPアドレス。Twitter、Googleのクチコミ、Facebook、Instagram等の海外サイトでは、投稿時IPアドレスは保存されておらず、発信者情報開示請求をしても、ログイン時IPアドレスしか開示されない。

ログイン時IPアドレスによる発信者情報開示請求

もともとプロバイダ責任制限法は、投稿時IPアドレスを想定して作られているため、ログイン時IPアドレスにより特定される者の住所氏名が発信者情報開示請求の対象になるかという論点は、「プロバイダ責任制限法が立法当初において予想していなかった事案」とされています(私法判例リマークス51(2015下)61頁)。

東京高裁判例を見ると、ログインした人は同じ人だから開示してよいとしているものもありますが、多くは、侵害情報が投稿された「直前」のログイン時IPアドレスなら、住所氏名の開示請求を認める、という内容になっています。

東京高判平26・5・28(判時2233号113頁)

利用者がアカウント及びパスワードを入力することによりログインしなければ利用できないサービスであることに照らすと、ログインするのは当該アカウント使用者である蓋然性が認められるというべきである。

東京高判平29・1・26(2017WLJPCA01266011)

当該コンテンツ・プロバイダから,当該権利の侵害が行われた日時及びその直前直後の日時における当該権利侵害に利用されたアカウントへのログインに係るIPアドレス並びにこれらのログイン情報が送信された年月日及び時刻の開示を受けることができる可能性はあるのであって,これらの情報の開示を受けることができれば,それを利用して,侵害情報が流通されることとなった特定電気通信の過程を媒介した特定電気通信役務提供者である経由プロバイダを特定し,その者から,侵害情報が流通されることとなった特定電気通信の過程において把握される発信者情報の開示を請求することは可能であると解される。

東京高判平29・5・25(D1-law■28260340)

当該ログインが当該侵害情報の発信の前提としてのログインであるという結び付きが認められる場合には、当該ログインの電気通信の過程で把握された情報であっても、当該ログイン者は当該発信者と同一であることから、「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するというべきである。

東京高判平30・6・13(判時2418号3頁)

法4条1項は,侵害情報そのものから把握される発信者情報でなくても,侵害情報について把握される発信者情報であれば,これを開示の対象とすることも許容されると解される

東京高判平31・1・23(判時2423号29頁)

権利の侵害に係る投稿の前に,ログインが一つしかないなど,当該ログインを行ったユーザーがログアウトするまでの間に当該投稿をしたと認定できるような場合には,当該ログインに係る情報を発信者情報と解することは妨げられるものではなく

改正プロ責法5条2項3項

ログイン時IPアドレスによる投稿者特定については、改正予定のプロ責法5条2項、3項あたりに規定されています。3項の定義規定では、「侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用し、又はその利用を終了するために行った」とあり、侵害情報を送信する際のログイン/ログアウト時IPアドレスが対象とされていることが分かります。

「侵害関連通信」とは、侵害情報の発信者が当該侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用し、又はその利用を終了するために行った当該特定電気通信役務に係る識別符号(特定電気通信役務提供者が特定電気通信役務の提供に際して当該特定電気通信役務の提供を受けることができる者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。)その他の符号の電気通信による送信であって、当該侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内であるものとして総務省令で定めるものをいう。

プロバイダ責任制限法が改正されたので、新法5条2項について別記事で検討してみました。

結論

以上から、ログイン時IPアドレスによる投稿者特定では、侵害情報の「直前」のログインがどれなのかを特定し、これをもって開示訴訟する必要があります。侵害情報の日付よりあとのログインIPアドレスで開示請求すると、これだけを理由として棄却されるリスクが高まります。


  • 2021/03/11 作成
  • 2021/03/17 更新
  • 2021/04/26 更新