発チの運用を考える(ヤフコメ)

2023.03.30

設問

(前提) ヤフコメを投稿するには電話番号での認証が必要となるところ、ヤフーアカウントと紐付く情報(施行規則2条3号)ではなく、認証のための情報(施行規則2条12号:特定発信者情報)である。そして、ヤフコメは非ログイン型なので、原則として特定発信者情報の開示請求はできない。以上を前提として次の問いに答えよ。

(問) ヤフーに提供命令を申し立てたところ、「プロバイダはOCN、IPアドレスは保有しているが、これと組み合わされたポート番号は保有していない」との情報提供があった。そこでOCNに開示命令申立をしてヤフーに通知し、ヤフーからOCNにIPが提供されたが、「ヤフーから提供されたIPアドレスはIPoEなのでソースポート番号が必要」との通知があった。この場合に、認証用電話番号(施行規則2条12号)の開示請求ができるか。

(注:実際の事案から若干変えてます)

前提情報

【重要なお知らせ】コメント投稿における携帯電話番号の設定の必須化について(2022年11月15日更新)
この記事を読む限り、電話番号はヤフーIDと紐付くように見え、施行規則2条3号なのではないか?とも思うのだが、ヤフー代理人は2条3号の電話番号ではないと言っていた。たしかに、ヤフーIDのアカウント設定画面を見ても、SMS認証の電話番号は「登録情報」としては出てこない。画面の作りからすると、2条12号に見えなくもない。
この前提事実を争う余地もあると思うが、いったんおいておく。

問題の所在

 プロ責法5条1項1号ハは、「当該開示の請求をする者がこの項の規定により開示を受けた発信者情報(特定発信者情報を除く。)によっては当該開示の請求に係る侵害情報の発信者を特定することができないと認めるとき。」と規定している。

 そうすると、ヤフー側でソースポート番号が保存されておらず、OCNへの開示請求が行き止まりになったことから、「侵害情報の発信者を特定することができないと認めるとき」に該当し、補充性(5条1項1号ハ)の条件を満たすのではないかとも思える。

 しかし、もう一度よく条文を見ると、「この項の規定により開示を受けた発信者情報」となっている。設問の事例では、提供命令を使っているため、まだIPアドレスの「開示を受け」ていない。IPアドレスの開示を受けたのはOCNだけだ。

解決方法

 条文の文言を重視するならば、ヤフーの開示命令申立を最後までやって、IPアドレスの開示を受け、その後、もう一度、特定発信者情報だけ開示請求し直す、ということになりそう。しかしそれは無駄。IPアドレスを開示してもらっても、OCNに対する開示請求ができないことは分かっているのだから、一回的解決のためにも、特定発信者情報の開示請求を認めるべきと思う。

 ということで、条文解釈で乗り切るしかない。

解答例

 5条1項1号ハには「開示を受けた発信者情報」とあるけれども、趣旨からして「開示を受ける発信者情報」や「提供命令でプロバイダに提供された発信者情報」も含まれる。よって、特定発信者情報としての認証用電話番号を開示請求できる。

 ということで、第2事件(OCN)は取り下げて、第1事件(ヤフー)の発信者情報目録を訂正申立で特定発信者情報の開示請求に訂正することになる、はず。
 もっとも、ヤフーがヤフーアカウントの住所氏名も保有していたら、補充性はみたさないことになるので、そこも確認が必要だろう。何か結果がでたら続報を書くこととする。

立案担当者の見解

立案担当者の発チの解説書(↑のP39)によると、「受けた」は確信犯で、「受ける」ではダメだと書いてあった。しかもご丁寧に、脚注では「提供命令により提供を受けたにすぎない」場合も「同号ハには該当しないものと考えることができます」と書かれていた。
いや本当ですか? そうすると無駄ですよ手続きが。ヤフーに対するIP開示を最後までやって、IPアドレスの開示を受けてから、もう一度、開示命令申立てをして、SMSメアドの開示を求めるとすると。印紙代1000円余計にかかるし、ヤフーも2度応訴の必要があるし、一度決定が出ているから二度目は形式的な手続きになるし。非訟手続の新設された制度趣旨の1つが「二度審理することとなるため、迅速な被害者救済の妨げになっているという課題」(P57)だというのだから、なおさらです。
「特定発信者情報の要保護性を考慮して」、「受けた」ことが必要とあるけれど、非訟手続きで裁判官が判断するのだから「要保護性」の要請は問題ないのではないですかね? 誰も幸せにならない解釈なので、これは賛成できません。


  • 2023/03/30 作成
  • 2023/03/31 修正
  • 2023/04/02 立案担当者の見解を紹介