併合事件の異議の訴えとIPアドレスの開示請求

2023.07.22

設問

第1事件Google、第2事件ソフトバンクが併合されていた発チの事件に却下決定が出て、異議の訴えを提起するものとする。
異議の訴えの訴状ではGoogleに対しIPアドレスを開示請求するか?

現実問題としては要らない

 第1事件Googleから開示してほしいのはアカウント情報(メアド、電話番号)であり、第2事件ソフトバンクから開示してほしいのは契約者情報(住所、氏名、メアド、電話番号)であって、IPアドレスは現実問題としては要らない。開示されても第2事件ソフトバンクのIPアドレスだし、異議の訴えの判決によってIPアドレスが開示されても、そのあと使い道がない。

要らなくても書かねばならないのでは?

 しかし、第1事件、第2事件が併合されているとき、第2事件ソフトバンクに対する発信者情報目録は、以下の書式になる。

東京地方裁判所が令和○年○月○日付けでした令和○年(モ)第60○○○号提供命令申立事件の提供命令主文第2項に基づき、被告Google LLCから被告ソフトバンクに提供された発信者情報によって特定される契約者に関する以下の情報。

 つまり、提供命令で提供されたこと(されること)が前提となっている。

 この提供命令は、「本案である発信者情報開示命令事件(中略)が終了したとき」「その効力を失う」(プロ責法15条3項1号)とされている。そして、異議の訴えを提起しなかった場合、却下決定は確定する(プロ責法14条5項)。

 ということは、IPアドレスの開示請求についても異議の訴えに含めておかないと、IPアドレス開示命令申立ての却下決定が確定する結果、提供命令は効力を失ってしまうのではないか?
 提供命令の効力が失われた結果、第2事件相手方ソフトバンクに対する発信者情報目録も開示不能になるのでは?

といった疑問が生じる。

回答

 もちろん、制度趣旨からして、そんな馬鹿な結論はないだろう、とは思う。しかしリスクは取れないので、不要と思いつつも、IPアドレスも異議の訴えに含めておかねばならないのでは、と考えた。

ということで、異議の訴えのテンプレ変更。


  • 2023/07/22 作成