発チの申立書テンプレを使う(Googleの口コミ・提供命令版)

2023.12.04

発チの申立書テンプレをたくさん作ったので、次は「申立書テンプレを使う」シリーズの記事を書きます。第3弾は、Xに次いでダウンロード数の多い「Google Mapsの口コミ」。
「口コミ」が「ろこみ」に見える問題のため、ずっと準備書面でも「クチコミ」と書いておりましたが、この表現がマイナーのため、あきらめて「口コミ」にします。

Googleに対する請求はどうするか

まず、Googleに対し何を請求するか?、どの手続きにより請求するか?を考えねばなりません。法改正前は、「IPアドレスの開示仮処分」しか選択肢がなかったのですが、現在は、①「IPアドレスの開示仮処分」のほかにも、②「IPアドレスの開示命令申立」、③「IPアドレスとアカウント情報(メアド・電話番号)の開示命令申立」、④「IPアドレスとアカウント情報(メアド・電話番号)の開示命令申立+提供命令申立」の4 パターンが考えられます。
IPアドレスの開示仮処分に削除仮処分をつけて、IPアドレス開示兼削除仮処分とする亜種もあります。

上記の①~④は、いずれも一長一短があり、まだ「これしかない!」と言えるような方法はないのですが、私が比較的多く使っているのは、①と④です。GoogleはTwitterと違い、提供命令に従って接続プロバイダを回答するので(ただし時間はかかる)、提供命令を使う方法でも良いかもしれない、と思っています。

というわけで、Googleに対する請求で使うのは、以下の申立書テンプレです。

番号タイトルWord/PDF
書式18-2 発信者情報開示+提供命令申立書(Google Maps用)

削除請求もしたいのであれば、IP開示+削除仮処分のテンプレ(書式8-Google Maps用)と、アカウント情報の開示命令申立書(書式17-3 Google Maps用)、のセットを使うと良いでしょう。削除仮処分のテンプレ(書式5-Google Maps用)と発信者情報開示+提供命令申立書(書式18-2 Google Maps用)の組み合わせでもよいのですが、IPアドレス調査未了の間に削除決定が先に発令されてしまうと、投稿者がこちらの動きに気付いてアカウントを削除してしまう(投稿者特定ができなくなる)リスクがあるため、削除と開示のタイミングが揃うよう、IP開示+削除仮処分を使うのが良いです。

番号タイトルWord/PDF
書式8-Google Maps 投稿記事削除及び発信者情報開示仮処分命令申立書(Google Maps用)
書式17-3 Google Maps 発信者情報開示命令申立書(Google Maps用、アカウント情報)

申立書作成

申立書テンプレは、「●」に文字を埋めるだけで申立書が完成する作りになっています。最近作っているテンプレでは、申立日付はWordの「日付選択コンテンツコントロール」、裁判所の宛先については「コンボボックスコンテンツコントロール」でお手軽入力できるようにしてあります。 なお、コンボボックスコンテンツコントロールでは大阪地裁も選択肢に入れてありますが、Google LLCの外国会社の登記は東京にあるため、開示命令申立の管轄は東京地裁しか選べません(プロ責法10条)。

日付選択コンテンツコントロール
コンボボックスコンテンツコントロール

投稿URLと投稿者URL

Googleに対する申立で、少々難易度の高いのがURLの指定方法です。
通常、以下のような形式になっています。

www.google.com/maps/contrib/(会員の番号)/place/(事業所を表す文字列)/

この「会員の番号」のことを、グーグルでは「GAIA ID」(Google Accounts and ID Administration ID)と呼んでいるようです。開示されるテキストファイルには、「Obfuscated Gaia ID」という表現もありますが、同じものです。このGAIA IDに一定の処理をすると、Google Account IDという名前のIDに変わるようです。
 発信者情報目録には、以下のように2つのURLを記載します。投稿者URLはGoogleの要求により入っています。

投稿URLhttps://www.google.com/maps/contrib/●/place/●/
投稿者URLhttps://www.google.com/maps/contrib/●/reviews/

 URLの調べ方については、こちらの記事を参照してください。記事の下のほうに、「グーグルのクチコミの閲覧用URL」という見出しがあります。

発信者情報目録

 申立書テンプレートの「(別紙)発信者情報目録」記載1の各情報は、Googleアカウントのアカウント情報を開示請求する部分です。電話番号と電子メールアドレスを開示請求しています。
 Googleが住所氏名を知っていると思われるケースでも、発信者情報目録に「住所」「氏名」を並べて書いてしまうと、特定発信者情報の補充性(法5条1項3号ロ)を満たさなくなり、ログイン時IPアドレスを開示請求できなくなるため注意して下さい。通常は、電話番号とメールアドレスだけを指定します。

1  アカウント情報
 別紙投稿記事目録記載のアカウントに登録されている以下の各情報。ただし、裁判所が発令する日において相手方が保有しかつ直ちに利用可能なものに限る。
(1) 電話番号
(2) 電子メールアドレス

 申立書テンプレートの「(別紙)発信者情報目録」記載2の各情報は、ログイン時IPアドレス・タイムスタンプを開示請求する部分です。

2  侵害関連通信に関する情報
 別紙投稿記事目録記載の投稿に用いられたアカウントに関する以下の各情報。
(1) 別紙投稿記事目録記載の投稿より前のログインに使用されたIPアドレス。ただし、本命令告知時において相手方保有するもののうち、当該投稿と最も時間的に近接したもの。
(2) 前項のIPアドレスが割り当てられた電気通信設備から、相手方の用いる電気通信設備へ同IPアドレスを用いた通信が送信された年月日及び時刻。

 施行規則5条からすると、①「アカウント作成時IPアドレス」、②「ログイン時IPアドレス」、③「ログアウト時IPアドレス」、④「アカウント削除時IPアドレス」を開示請求できますが、Googleによると、②(しかも投稿前のログイン)以外は調査に時間がかかるとのことです。ただでさえ調査が遅いのに(提供命令の履行に1~2か月)、それがさらに遅くなると投稿者特定に支障があるので、上記の目録となっています。

 もし、この目録で「指定のIPアドレスは保存されていない」との回答があった場合には、遠慮なく、投稿後のログイン時IPアドレスや、ログアウト時IPアドレスを開示請求すると良いです。

甲号証

甲●:(画面)

口コミのスクショまたは印刷物を想定しています。「甲1」とでもしてください。
投稿URLの全体が見えるようにスクショするのは、特殊なアプリでも使ってないと困難なので、URLの前半と後半を分割して2枚スクショするか、ページを印刷してURL全体が印刷されるようにするしかないでしょう。
投稿URLを証明するためのスクショと、投稿者URLを証明するためのスクショが要ります。

甲●:WHOIS

ドメイン名「google.com」の登録者(registrant)がGoogle LLCであることをWHOISで証明します。「甲2」とでもしてください。
このドメインのレジストラがMarkMonitorなので、同社のWHOISが良いでしょう。「google.com」を検索すると、以下の情報が表示されるので、この部分をスクショします。

Registrant Organization: Google LLC
Registrant State/Province: CA
Registrant Country: US

甲●(権利侵害の明白性)

投稿内容が違法であることを裏付ける証拠です。甲3とでもしてください。複数あるときは、私は甲3の1、甲3の2、などとしています。

甲●:補充性の報告書 以下のPDFを想定しています。「甲4」とでもしてください。

番号タイトルPDF
資料01 特定発信者情報の補充性に関する報告書(Google用)

甲●:ログ保存期間
ログ保存期間が3~6か月程度であることを示す文献のコピーを想定しています。
当サイトのログ保存期間の記事を疎明資料にしている弁護士も多いようです。
拙著の「付録3」のコピーでも構いません。「甲5」とでもしてください。

証拠説明書

東京地裁9部では証拠説明書は必須です。証拠説明書がどんなものか分からない人は、裁判所のサンプルを真似してください。
表の部分は、以下の内容くらい簡単でも良いでしょう。

号証標目原・写作成年月日作成者立証趣旨
甲1Googleマップ2023/11/1氏名不詳者本件投稿の内容、URL
甲2WHOIS google.com2023/11/18印刷MarkMonitorドメイン名google.comの登録者が相手方である事実。開示関係役務提供者性。
甲3陳述書2023/11/18申立人摘示事実の反真実性、同定可能性
甲4報告書2022/10/6神田知宏特定発信者情報の補充性
甲5付録32023/9/13神田知宏接続プロバイダのログ保存期間
番号タイトルWord/PDF
書式33-3 証拠説明書サンプル(Google Maps用)

提出方法

本人訴訟の人であれば、申立書2通、証拠説明書1通、甲1~甲5を1通、Google LLCの外国会社の登記とグーグル・テクノロジー・ジャパン株式会社の登記(法務局かネットで買えます)を各1通(合計2通)、印紙2000円(開示命令の分と提供命令の分、各1000円の合計)、を東京地裁民事第9部に郵送してくください。あとレターパックが要ります(裁判所に電話で聞いて下さい)。

住所〒100-8920
東京都千代田区霞が関1-1-4
東京地方裁判所(民事第9部)
電話番号発令係
03-3581-3402
03-3581-3404
03-3581-3406
FAX番号03-3595-2259

提供命令申立

提供命令の申立ては、本案の発信者情報開示命令申立書と分けることもできますが、2通出すより1通でまとめて出したほうが楽なので、申立書テンプレ群も、基本的に提供命令申立は、開示命令申立書の中に書いています。
そのため、書式28-2は基本的に使いません。

申立ての趣旨

提供命令申立ての申立ての趣旨は「別紙主文目録記載の裁判を求める」だけです。具体的に求める決定の内容は、「(別紙)主文目録」に書かれています。

主文目録

1  相手方は、申立人に対し、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める事項を書面又は電磁的方法により提供せよ。
イ 相手方が、別紙発信者情報目録記載2の各情報のうち、相手方が保有するものにより、別紙投稿記事目録記載の情報に係る他の開示関係役務提供者(当該情報の発信者であると認められるものを除く。以下同じ。)の氏名又は名称及び住所(以下「他の開示関係役務提供者の氏名等情報」という。)の特定をすることができる場合
 当該他の開示関係役務提供者の氏名等情報
ロ 相手方が、別紙発信者情報目録記載2((2)を除く)の各情報を保有していない場合又は保有する当該各情報により上記イに規定する特定をすることができない場合
 その旨

2  相手方が、前項の命令により他の開示関係役務提供者の氏名等情報の提供を受けた申立人から、申立人が当該他の開示関係役務提供者に対して別紙投稿記事目録記載の情報についての発信者情報開示命令の申立てをした旨の書面又は電磁的方法による通知を受けたときは、相手方は、当該他の開示関係役務提供者に対し、別紙発信者情報目録記載2の各情報のうち相手方が保有するものを書面又は電磁的方法により提供せよ。

 主文目録第1項は、法15条1項1号に対応し、主文目録第2項は、法15条1項2号に対応しています。主文目録のイ・ロは、それぞれ法15条1項1号イ、同ロに対応しています。

 この目録の中で、変更する可能性があるのは太字にした部分です。「別紙発信者情報目録記載2」は、ログイン時IPアドレスを開示請求している部分です。アカウント情報を開示請求しない場合、発信者情報目録に「1」がなくなり、「2」が「1」に繰り上がるため、主文目録での表現は「別紙投稿記事目録記載2」ではなく「別紙発信者情報目録記載1」または「別紙発信者情報目録記載」になります。

 太字にした「((2)を除く)」の部分は、「タイムスタンプ」を除外する表現です。法15条1項1号ロが参照している施行規則7条ではタイムスタンプが除外されているため、主文目録の「ロ」でもタイムスタンプを除外する必要があります。
 申立書テンプレの別紙発信者情報目録では、2(2)がタイムスタンプになっていますが、たとえば発信者情報目録にログアウト時IPアドレスを追加して、タイムスタンプが(3)になった場合には、提供命令の主文目録では「(3)を除く」に変更する必要があります。

申立後どうなるか

申立後には、事件番号などのお知らせがきます。
次に、1週間くらいで「提供命令発令」のお知らせがきます。裁判所から「本案の申立書(提供命令申立書を含む)」と提供命令の決定書がGoogle LLCへ送られるのにあわせて、申立人からは証拠説明書と甲号証をGoole LLC(渋谷ストリームあて)に送ります。

提供命令の履行及びその後

提供命令がGoogle LLCに到着すると、いろいろな部署を回り、最終的にGoogle LLCの代理人(日本の弁護士)から、「投稿者の使った接続プロバイダはここですよ」という趣旨の情報提供書が届きます。だいたい1か月半~2か月後くらいです。

これが届いたら、次は接続プロバイダに対する開示命令申立てです。

それは別の記事に書くことにして、ここでは、使用する申立書テンプレだけ書いておきます。

番号タイトルword/PDF
書式19-2 発信者情報開示命令申立書(接続プロバイダ用、先行する提供命令あり、ログイン型IP)

「保有していない」との回答だったときは

提供命令に対する回答として「保有していない」との回答だったときは、Googleに調査範囲を広げてもらいましょう。具体的には、➀投稿後のログイン時IPアドレス、➁投稿後のログアウト時IPアドレス、を探してもらう方法です。
そのためには、別途、上記の2つについて、提供命令の申立てをします。申立書テンプレは書式28-2 Google Maps用を使います。

番号タイトルword/PDF
書式28-2google maps 提供命令申立書(Google Maps、2回目用)
※書式18-2での提供命令が「不保有」などの結果だったとき

  • 2023/12/04 新規作成