アフィリエイトサイトの削除・開示請求

2020.11.19

アフィリエイトサイトとは

アフィリエイトサイトは,アフィリエイターがアフィリエイト報酬目的で作っているサイト,と一応定義しておきます。ブログの1つの記事として作られる例もありますが,サイト全体がアフィリエイト用のアフィリエイトサイトという例も珍しくありません。

アフィリエイトサイトの問題点(名誉毀損の点)

悪質なアフィリエイトサイトは,自分のアフィリエイト報酬につながる商品だけを良く見せ,競合他社の商品を悪く見せる,という傾向にあります。
そうすると,悪く書かれたほうの商品(販売会社)はたまったものではありません。

従前の裁判所の対応

アフィリエイトサイト側でもうまく法に触れないような表現が取られており,個人の感想表現にするなど,競合他社の製品批判が違法なのかどうか,明確でないケースも目立ちました。

たとえば「A商品は最悪で使い物にならない。その点,B商品はすばらしい。私のお勧めはB商品。」という表現があった場合,従来型の法的検討手順によると,まずA商品が「最悪で使い物にならない」と書いている点で,意見論評型の名誉権侵害と,一応なります。しかし,①公共の利害があり,②専ら公益目的で,③重要な前提事実が真実で,④表現が人身攻撃に及んでいないときに,正当な意見論評だと判断されます。

そのため,この記事を削除したいと思ったら,③の「重要な前提事実が真実ではない」と主張するか,④表現が人身攻撃に及んでいる,と主張するのが定石でした。

アフィリエイト目的

この点,東京地判平成27年7月13日(2015WLJPCA07138008)は,「本件サイトがおすすめの(商品)ランキング第1位ないし第3位とする(商品)についてのアフィリエイトサイトであることが認められ,かかる事実によれば,本件サイトは,原告教材の内容はもとよりその宣伝手法にも言及して悪印象を与え,その評価を下げることにより特定の(商品)の購入に誘導し,アフィリエイト報酬を得ることを主たる目的とするものというべきであるから,本件投稿が専ら公益を図る目的によるものとは認められない」「よって,本件投稿に違法性阻却事由の存在は窺われないものと認められる」として,アフィリエイトサイトの公益目的を否定しました。

そうすると,上記例では,②の公益目的がない,という理由で,記事が違法だと言えることになり,削除や発信者情報開示請求ができることになります。また,サイト管理者に対する損害賠償請求も可能となります。

アフィリエイトサイトの問題点(不正競争)

アフィリエイトは、不正競争防止法の不正競争行為をしているのではないかと考え、東京地判平成26年6月4日(2014WLJPCA06049002)、東京地判平成26年10月15日(2014WLJPCA10159006)、東京地判平成29年11月28日(2017WLJPCA11288005)などで主張してみましたが、「競争関係」がネックとなり、結局、名誉毀損として判決が出てきました。つまり、裁判所は、アフィリエイターとの間の「競争関係」を認定したがらなかったわけです。

大阪地判令和2年11月10日判決(裁判所HP)

ところが、「競争関係」を認める判決が出ました。令和2年(ワ)第3499号 発信者情報開示請求事件では、以下のように認定されています。「本件発信者」がアフィリエイター、「訴外会社」がアフィリエイターに広告を頼んだ広告主、「第三者商品」は、広告主の商品です。

本件発信者は,訴外会社との関係上,第三者商品の売上向上について利益を有する者であり,原告や原告商品の評価を低下させることによって不当な利益を得る関係に立つ者であると解するのが相当である。したがって,原告と本件発信者の間には,同号における「競争関係」が存するということができる。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/839/089839_hanrei.pdf

削除請求と開示請求

この判決を使えば、アフィリエイトサイトは、アフィリエイトであることを理由として、削除請求(不競法3条)や、開示請求(営業権侵害)ができることになります。もちろん、サイトの記載に不正競争行為が必要となりますが。

請求相手

削除や発信者情報開示の請求相手は,サーバー管理会社となります。


  • 2015/07/16 作成
  • 2020/11/19 更新(不正競争の構成を追加)