リツイートの抗弁に関する大阪高判令2・6・23(令元ネ第2126号)

2020.06.24

事案の概要

橋下徹,元大阪府知事がジャーナリストに対し,リツイートによる名誉権侵害を理由として慰謝料請求した事案

一審大阪地裁は33万円の慰謝料を認定し,これに対しジャーナリスト側が控訴した。

大阪高裁の立てた基準

単純リツイートに係る投稿行為は,一般閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば,元ツイートに係る投稿内容に上記の元ツイート主のアカウント等の表示及びリツイート主がリツイートしたことを表す表示が加わることによって,当該投稿に係る表現の意味内容が変容したと解釈される特段の事情がある場合を除いて,元ツイートに係る投稿の表現内容をそのままの形でリツイート主のフオロワーのツイッター画面のタイムラインに表示させて閲読可能な状態に置く行為に他ならないというべきである。そうであるとすれば,元ツイートの表現の意味内容が一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば他人の社会的評価を低下させるものであると判断される場合,リツイート主がその投稿によって元ツイートの表現内容を自身のアカウントのフオロワーの閲読可能な状態に置くということを認識している限り,違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き,当該投稿を行った経緯,意図,目的,動機等のいかんを問わず,当該投稿について不法行為責任を負うものというべきである。

応用例

リツイートの抗弁は,「自分が書いたのではなくリツイートしただけであり,自分は責任を負わない」といった趣旨の反論を指す用語です(学術用語ではなく,この界隈でそのように呼ばれているだけなので要注意)。

この論点は,コピペの抗弁(コピペしただけなので責任を負わない)とも似ており,最初に書いた人だけが違法なのか,それとも,コピペしたりリツイートした人も違法になるのか,という問題です。

これについて大阪高裁は,(意味内容が変容したと解釈される特段の事情がある場合を除いて)リツイートした人も違法,という判断をしています。

この裁判例は,違法なツイートをリツイートした人の開示請求や,リツイートの削除請求に応用できます。

気になる点

最高裁(最大決平30・10・17)は,ツイートの読み方について「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準とすれば」という表現を使っているところ,これとは敢えて違う表現(「一般閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば」)を使った理由は何なのかというところは気になります。