記事概要
何者かが自分に成り済ましてツイッターのアカウントを開設したとして、神奈川県内の未成年の男性が、開設に使われた携帯電話番号の開示をツイッター社に求めた訴訟の判決で、東京地裁は26日、「開設は男性をおとしめる目的で悪質。投稿が違法なのは明らかだ」として開示を命じた
https://www.47news.jp/national/4953060.html
東京地判令2・6・26は,Twitter社(提訴時はアイルランド法人Twitter International Company)に対し,SMSメアドの発信者情報開示請求を認めました。
SMSメアドの開示請求
携帯電話番号の発信者情報開示請求という議論は,昨年から裁判例に現れるようになったものです。2019年4月にサイバーアーツ法律事務所(田中一哉弁護士)を訪問した際,中澤佑一弁護士から特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令の「電子メール」の定義にSMTP方式とSMSがあることを指摘され,発信者情報開示請求でもSMSメアド(つまり,携帯電話番号)の開示請求ができるのではないか議論となりました。その後,プロ責法3条の2第2号が公職選挙法142条の3第3項の「電子メール等」を引用し,公職選挙法142条の3第3項が特定電子メールの送信の適正化等に関する法律2条3号の電子メールアドレスを引用しているという条文のつながりが発掘され,現在の議論へとつながっています。
中澤佑一弁護士の関わった判決(東京地判令元・12・11,24部合議)がソフトバンクに対するSMSメアドの開示請求について詳細に検討して認容したあとは(発信者の携帯も開示命じる ネット中傷で東京地裁),各地で続々とSMSメアドの開示請求が認められてきていました(福井地判令元・12・10,名古屋地判令2・1・30,大分地判令2・3・24,東京地判令2・4・7など)。
もっとも,いずれも接続プロバイダに対するもので,Twitterのようなコンテンツプロバイダに対するもので,かつ,詳細に理由を検討したうえでの認容は,ほぼ明らかとなっていませんでした。東京地裁(民事6部合議)は,以下のように「特定電子メール法を中心とする体系的な構造」を重視して,プロ責法もその「体系的な構造」の中に位置するのだから,「電子メールアドレス」にはSMSメアドも含まれる,と判断しているように思われます。
このように,「電子メールアドレス」及び「電子メール」という法令用語については,特定電子メール法及び同法により委任された総務省令(以下,併せて「特定電子メール法等」という。)による定義規定を中心として,本省令を含む他の法令がこれと同一の定義を採用し,又はこれを引用するという体系的な構造が構築されているということができることからすると,本省令における「電子メール」についても,特定電子メール法におけると同様,同法の委任する総務省令によって定められたSMS方式によるものを含むと解することには十分な合理性がある。
東京地判令2・6・26
もっとも,現在,総務省の発信者情報開示の在り方に関する研究会では,プロ責法省令を改正して,電話番号の開示請求が認められるようにする方針のようですので,SMSメアドがプロ責省令3号のメールアドレスに含まれるかという論点は,近い将来,過去の遺物になってしまう予定です。