発信者情報開示請求の場合
被害者から発信者情報開示請求を受けたプロバイダは,投稿者と思われるプロバイダの契約者に対し,「開示してもよいか」を問い合わせる必要があります。これが意見照会です。
この問い合わせに対し,「開示に同意」「開示に不同意」といった回答をする書類が,意見照会回答書です。
ネットでは,「不同意」と書けば開示されない,という情報が出回っていますが,一面において正しく,一面において誤りです。もし,発信者情報開示請求が任意請求(テレコムサービス協会書式による)であれば,不同意と書くだけで開示されない可能性は高いと思われます。一方,発信者情報開示請求が訴訟手続の場合は,裁判所が開示せよ,と判決を出せば,いくら「不同意」と書いても開示されます。これまでの経験上,例外はありません。
ですので,どうしても開示されたくない場合は,「不同意」と書くだけでなく,書いた内容の真実性も主張し,真実性の証拠をプロバイダに送る必要があります。プロバイダはプロバイダの判断により,受け取った回答書の内容を裁判で主張し,受け取った証拠を裁判所に提出します。
削除請求の場合
被害者から削除請求を受けたコンテンツプロバイダ,ホスティングプロバイダは,投稿者と思われるプロバイダの契約者に対し,「削除してもよいか」を問い合わせることがあります。これが意見照会です。
この問い合わせに対し,「削除に同意」「削除に不同意」といった回答をする書類が,意見照会回答書です。発信者情報開示請求と同じく,削除請求が任意請求であれば「不同意」と書くだけで削除されない可能性が高く,削除訴訟をプロバイダが定期されているのであれば「不同意」と書くだけでなく,その理由と真実性の証拠もプロバイダに送付するのがよいです。プロバイダはプロバイダの判断により,受け取った主張を裁判所にも主張し,受け取った証拠を裁判で提出します。
意見照会回答書の代理作成
プロバイダへ提出した意見照会の回答書は,住所氏名等を塗りつぶしたうえで,訴訟の乙号証(被告側証拠)として裁判所に提出されます。しかし,(1)住所氏名が塗りつぶされているため匿名回答になってしまい証拠価値が下がること,(2)法的には有効ではない内容になっているケースが多々あること,(3)プロバイダ側の弁護士はプロバイダの代理人であり,投稿者の代理人ではないため,投稿者から,あまり多くの事情を聞き取っていないこと,といった問題がありました。
そのため最近では,意見照会回答の代理作成を弁護士に依頼する,というケースも見受けられるようになりました。(1)弁護士の名前は塗りつぶす必要がないこと,(2)将来の損害賠償請求訴訟も見据えて,法的に有効な反論を回答書の段階で書けること,(3)発信者の代理人であるため,プロバイダの代理人より連絡しやすいこと,といった事情により,上記の問題に対応できます。