権利侵害性
「詐欺みたい」「基地外」(キチガイ)「空気の読めない」「バカ」は名誉権侵害(名誉毀損)ではない。
「貧乏市民を保険に加入させて」は名誉感情侵害(侮辱)になりうるが、詳しい事情がないと判断できない。
東京地裁平成29年11月9日判決
このうち,投稿番号90は,原告会社が営み,原告X2が従事している保険代理店の業務を「詐欺みたい」と表現し,投稿番号148は,原告X2を「基地外」(気違いの誤記と認める。)と表現し,投稿番号149は,原告X2を「クズ野郎」と表現し,投稿番号150は,原告X2を「空気の読めない」と表現し,投稿番号156は,原告X2を「バカ」と表現している。しかし,上記各投稿は,上記のような侮辱的な表現を含むとはいえ,原告らの人格的価値に関し,具体的事実を摘示してその社会的評価を低下させるものではなく,原告らの名誉感情を侵害するにとどまるものであって,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合に初めて原告らの人格的利益の侵害が認められ得るにすぎない(最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁参照)。その上,そもそも上記各投稿は,本件各投稿には含まれていない。
本件各投稿中,上記各投稿のように,原告らを侮辱する文言を含むと考えられるのは,せいぜい投稿番号90を受けてされた投稿番号95の「貧乏市民を保険に加入させて。。」という投稿のみであるが,特段の根拠を示すこともなく,投稿番号95を投稿した者の意見ないし感想としてこれが述べられていることも考慮すれば,投稿番号95の文言それ自体から,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず,本件スレッドの他の投稿の内容,本件各投稿がされた経緯等を考慮しなければ,原告らの権利侵害の明白性の有無を判断することはできないものというべきである。