発チの申立書テンプレを育てるプロジェクト、2回目は「接続プロバイダに対する提供命令」の件。
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接続プロバイダに対する提供命令申立の必要性
提供命令の申立ては、サイト管理者に対するものだけではない。改正法は、接続プロバイダに対する申立ても予定している。代表例はMVNOだろう。たとえば、IPアドレスの登録者がKDDIでも、その下にUQコミュニケーションズ(MNO)がいて、その下にMVNE、その下にMVNOがいるような利用形態であれば、KDDIから順に3回、提供命令を申し立て、MVNOまでたどり付く必要がある。投稿者に関する情報はMVNOしか知らない。
同じように、IPアドレスの登録者がJCOMでも、顧客情報を持っているのはJCOM地域会社(JCOM関東、JCOM千葉・・・等々)といった例もある。この例なら、JCOMに提供命令を申し立て、地域会社の名称と住所を提供してもらう必要がある。
似たような話が、いろいろなプロバイダにある。
発信者情報目録の内容は何か
ある接続プロバイダに「下」がいるかどうかは、IPアドレスを見ても一般には判断できない。そのため、原則として接続プロバイダに対する発信者情報開示命令申立では「契約者に関する情報」、つまり契約者の「氏名、住所、電話番号、メールアドレス」を開示請求する。発信者情報目録に書くのも、原則としてこれだけだ。
しかし上記のように、「下」の存在が高度に疑われるプロバイダというものが存在する。そういった接続プロバイダに開示命令を申し立てるのであれば、最初から提供命令申立を付けておいても良いだろう。印紙代が1000円余計にかかるものの、答弁書が出てから別途提供命令を申し立てるという時間的なロスを嫌うなら、許容範囲の費用だろう(なお、私は印紙代を依頼者に請求していないので自腹となる)。実際に申立てをして「下」がいなければ、提供命令申立を取り下げればよい。
最初からは提供命令申立てを付けない場合、答弁書で「下がいる」といわれたあと、「申立の変更」により発信者情報目録を変更し、そのうえで提供命令の申立てを追加する。申立ての変更が必要となるのは、法15条1項1号イに「当該発信者情報開示命令の申立てに係るものに限る。」とあるためだ。具体的には、本案たる開示命令申立事件の発信者情報目録に、「下」に渡す発信者情報(特に施行規則2条14号の情報)を追記する必要がある。なお、申立の変更ではなく、目録の「訂正申立書」でも足るようなことを9部の裁判官が言っていた。
では、そういった「下」の存在が疑われるケースにおける提供命令申立では、発信者情報目録に何を書けばよいのか。ヒントは施行規則7条にある。
非ログイン型投稿について接続プロバイダに開示請求するとき、使う条文は法5条1項であり、特定発信者情報(ログイン情報)は開示請求しないので、施行規則7条2号が適用される。「第二条第五号から第七号まで及び第十四号に掲げる情報」となっていることから、発信者情報目録に追加するのは「IPアドレス(5)、インターネット接続サービス利用者識別符号(6)、SIM識別番号(7)、利用管理符号(14)」の4種類となる。
他方、ログイン型投稿について接続プロバイダに開示請求するとき、使う条文は法5条2項だから、施行規則7条3号が適用される。「第二条第九号から第十二号まで及び第十四号に掲げる情報」となっていることから、発信者情報目録に追加するのは「IPアドレス(9)、インターネット接続サービス利用者識別符号(10)、SIM識別番号(11)、SMS電話番号(12)、利用管理符号(14)」の5種類となる。
これらはいずれも、あるプロバイダから見て「下」のプロバイダを特定する際に利用できる情報だと、施行規則は考えているようだ。だが実際には、14号の「利用管理符号」だけでよいのかもしれない。MVNOの代理人として開示訴訟を担当した際の記憶では、「利用管理符号」(そのケースでは「CUI」と表現されていた)だけで、MVNOが特定されているようだった。とはいえ、全部書いておいてもデメリットはないだろう。
結局、接続プロバイダに対する開示命令申立で提供命令を申し立てるときは、発信者情報目録に「1 投稿者に関する情報」と「2 次のプロバイダを特定するための情報」を書き、提供命令用発信者情報目録には「2 次のプロバイダを特定するための情報」だけを抜き出せばよい。
サイト管理者に対する提供命令申立と異なり、「タイムスタンプは除外」といった面倒な処理がないから、提供命令の申立ての趣旨で引用される提供命令用発信者情報目録(1号イで1回引用、1号ロで2回引用、2号で1回引用)は、1種類だけとなる。
発令例
以下、手持ちの提供命令(発令済み)主文と発信者情報目録を貼っておく。
例によってベタ書き方式だ。いつか目録方式に・・・と野望を抱くものの、もはや劣勢である。援軍求む。
イ号ロ号併用型
Twitterから開示されたIPアドレスのケース
イ号限定型
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