発チの申立書テンプレを育てるプロジェクト(3)

2022.11.01

 現在、絶賛育成中の「発チ申立書テンプレ」だが、それなりに利用者がいるようで、神田のテンプレだなと思う申立書が散見されるらしい。そのためか「このテンプレ育成に協力すれば、裁判官・書記官の仕事が減って楽になる・・・」などと思ったかどうかは分からないが、複数の裁判官からアドバイスを得ることができた。

提供命令用発信者情報目録は廃止

 まず、簡単なところから行こう。私は当初、本案用の「発信者情報目録」だけを発チ申立書テンプレに入れていた。しかし、実際に発令された提供命令に「提供命令用発信者情報目録」なるものが付いていたことから、テンプレにも本案用の「発信者情報目録」と、提供命令用の「提供命令用発信者情報目録」を分けて入れることにした。

 裁判所としても当面の不都合はなかったようだが、最近「発信者情報目録が複数あるのは不便」との流れになったようだ。提供命令用発信者情報目録は、本案に付ける発信者情報目録の一部でなければならないところ(15条1項1号イに「当該発信者情報開示命令の申立てに係るものに限る。以下この項において同じ。」とあるため。)、「一方だけ訂正申立で訂正し、他方は訂正漏れ」といった事態が生じ、裁判所の手間が増えてしまったようなのだ。

 そのため元の形に戻し、「発信者情報目録」は1つだけとし、「1 アカウント情報」、「2 IPアドレスなどの情報」とするのがよいとのアドバイスを得た。

 このようにすると、提供命令のときに「1 アカウント情報」が宙に浮いてしまうところ、「1 アカウント情報」は余事記載・無益的記載事項扱いにするから問題ないとのことだった。もちろん、アカウント情報のないサイトであれば、発信者情報目録はIPアドレス開示仮処分の発信者情報目録と基本的に同じ内容となる。

実際に発令された例(Twitter)

実物を見たほうがイメージしやすいと思うので、対Twitterの発令例。

タイムスタンプの除外(1項1号ロ)は主文側で対応する

 次に、提供命令15条1項1号ロにおける「タイムスタンプの除外」をどのように記述するかが論点となった。

 私は、当初テンプレに「施行規則7条目録」というものを付けていたが、これは条文解釈が間違っていたので問題外だった(そのまま使ってしまった人ごめんなさい。9部では「これは古いバージョンのテンプレだなと思いつつ、立場上「新しいテンプレを使って下さい」とも言えず、お困りだったとかなんとか)。

 次の段階では、「提供命令用発信者情報目録」を1と2に分け、「1 IPアドレス等の情報」、「2 施行規則7条との重なりの情報」とのスタイルにした(2022/11/01まで公開していたもの)。

 しかし、このスタイルは裁判所の美学に反するらしい。ある裁判官は「タイムスタンプを除くもの」と主文側で書いたほうが良いと匂わせた。書記官も言っていたか(実際の発令例は前掲)。

 ただ、裁判官の中には「タイムスタンプ」と書くだけでは、施行規則2条8号の「開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻」、同13号の「開示関係役務提供者の用いる電気通信設備に侵害関連通信が行われた年月日及び時刻」が示されたことになるのか疑問がある、と考える人もいた。たしかにそうだろう。

 この問題点への解決方法として、「発信者情報目録」で列挙する8号、13号の項目の横に、「(「タイムスタンプ」という。)と記載しておく方法が示された。そのうえで、主文において「タイムスタンプを除く」とすれば、施行規則7条により除外されるものが明確になる。ただ、目録をまたいで「タイムスタンプ」という言葉で結びつけるわけだから、「別紙発信者情報目録記載2のタイムスタンプを除く」との表現でないと正確ではないだろうなと現時点(2022/11/01)では思っている(最終的には、「タイムスタンプという」だけにした)。

 なお、接続プロバイダへの提供命令ではタイムスタンプは除外されない(もともとない)。そのため、サイトあての提供命令の主文と、接続プロバイダあての提供命令の主文は別のもの(別のテンプレ)を用意せねばならない。接続プロバイダあての提供命令は、ログイン型と非ログイン型で内容が異なるのだが(非ログイン型にはSMS電話番号がない)、これは主文での対応ではなく、発信者情報目録での対応になる。

2022/11/07追記:上記のとおり、(「タイムスタンプ」という)を発信者情報目録に書いて、主文目録で(タイムスタンプを除く)と書いたところ、やっぱりというか何というか「タイムスタンプじゃわからん」との天の声をいただいた。理由は、主文目録のほうが発信者情報目録より前に貼られるから。
ということで、発信者情報目録の(「タイムスタンプ」という)は、やめて、主文目録のほうで「別紙投稿記事目録記載2((4)を除く)」か「別紙投稿記事目録記載2(1)ないし(3)」のように書くことになるかもしれない。

提供命令用主文は目録にする

 提供命令の主文を目録形式にして、表紙に主文目録をペタッと貼り付けて発令したい──とうとう裁判官もこの理想を口にした。問題はその方法だ。

 私は表形式の提供命令主文目録をテンプレに入れてあるが、まぁ、こういうスタイルは裁判所としては難しいだろう。それは分かる。また、「申立ての趣旨」のほうに「相手方は、申立人に対し、○○を提供せよ」を入れてしまうと、申立ての趣旨と主文目録を行ったり来たりしないと1つの文章にならず読みにくい、とも言われたか。

 裁判所から提案されたのは、「ベタ書き方式」の主文を主文目録に全文入れて(別紙「提供命令主文目録」などと名前を付け)、それを申立ての趣旨から引用する方式だった。言い回しまでは提案されなかったので以下は試案だが、こういう感じでどうだろう。

第1 申立ての趣旨
 別紙提供命令主文目録記載の裁判を求める

この方式の結果は、こちら

細かいところ

  • 「侵害関連通信」という→「本件侵害関連通信」という、に(条文の用語そのまま使わない)。

暫定FIX版公開

 と、方針だけ書いたが、ちょっとしばらくテンプレに反映できない気がする(2022/11/01時点)。

 以前と比べ、業務量が2~3倍にはなっている?。以前なら,発信者情報開示請求訴訟が1月に1回だったが、開示命令申立だと仮処分と同じで2週間に1回である。また、「提供命令」なるものが、まだまだ手のかかる子であり、うまく動いていない。提供命令に応じないと明言するサイトがあったり、MVNO、SIMカード再販といった、前の制度なら、なあなあでやっていた部分もきっちり法制度の中で扱わねばならなかったり。しかも一連の記事でも書いているが、かなりの量の訂正申立書を裁判所に送っている。


 とかなんとか言いつつ、2022/11/04、暫定FIX版のアップに至る。これで裁判官から「訂正申立書出せ」などと言われないようなら、このまま使っていく予定。
 あとは、TwitterやらInstagramやら、サイトに応じた発信者情報目録を整備していくだけ。

【発チ申立書テンプレ保管庫】https://kandato.jp/templates/#hisyou

本プロジェクトの功罪(受け側の声)

要旨「みんなが独自にフリースタイルの申立書を出してきたら、全部すみずみまで読まねばならないので、ある程度パターンが決まっていて助かった」「テンプレ使用者の申立書は、どこが間違っているか予測できたので助かった」「日ごと、全体的に申立書の訂正回数が減ってきた」

ということで、本プロジェクトは世の中のお役に立ったようです。たぶん。

補遺

細かいことを書くと、別紙「投稿記事目録」の中に投稿内容は書かず、それは「権利侵害の説明」へ送ると助かる、と仮処分時代から言われている。なぜなら、発令に使う目録(投稿記事目録)に投稿全文が入っていると、一字一句、疎明資料と照らし合わせなければならず、書記官が大変だから。結果、発令も遅くなり、債権者・申立人にとっても不都合なのだ。

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