発チの申立書テンプレを育てる(2号限定型提供命令)

2023.02.09

設問

第1事件としてGoogleに開示命令+提供命令を申し立て、Googleから「プロバイダはKDDIですよ」と提供された。そこで第2事件としてKDDIに開示命令を申し立ててGoogleに通知し、GoogleからKDDIへIPアドレス・タイムスタンプを提供してもらったところ、KDDIから「顧客情報を知っているのはソネットなので同社に開示命令申立をしてください」と言われた。
この場合、IPアドレス・タイムスタンプ(Googleに対する提供命令2項によりGoogleからKDDIへ提供された情報)をKDDIからソネットへ提供してもらうにはどうすれば良いか?KDDIは、裁判所の命令がなければ提供できないと言っているものとする。

提供命令1号は必要か?

まず、KDDIに提供命令を申し立てて、ソネットへIPアドレス・タイムスタンプを提供してもらえば良いのではないか?というところまでは分かる。問題は条文だ。

15条1項2号は、「この項の規定による命令(以下この条において「提供命令」といい、前号に係る部分に限る。)により他の開示関係役務提供者の氏名等情報の提供を受けた当該申立人から、当該他の開示関係役務提供者を相手方として当該侵害情報についての発信者情報開示命令の申立てをした旨の書面又は電磁的方法による通知を受けたときは、」となっているため、15条1項2号によりKDDIからソネットへIPアドレス・タイムスタンプを提供してもらうためには、15条1項1号によって、KDDIからソネットの氏名等情報が提供された場合でなければならない。

しかし、すでに次のプロバイダ(「他の開示関係役務提供者」)はソネットだと分かっている状態なので、あえてKDDIに15条1項1号の提供命令を申し立てて、その発令を待ってKDDIからソネットの氏名等情報を提供してもらう必要がない。

これは、法の不備ではなかろうか。法の想定していない事態になっていると思われる。

15条1項2号の提供だけでよいのに、15条1項1号の提供がなければ2号の提供命令が出せないような体裁になっている。

9部のとある裁判官は、「2号は一般的なケースを規定したにすぎないから、必ずしも1号の提供がなくても2号の提供命令は発令できるのではないか?」と言っていた。これを書いている時点では、まだ発令例はない。

タイムスタンプ問題はない

提供命令といえば施行規則7条により、発信者情報目録に「タイムスタンプを除く」との指摘が必要なのかどうか気にせねばならない。

しかし、この件(2号限定型の提供命令)では、タイムスタンプ問題は生じない。なぜなら、施行規則7条は「法第十五条第一項第一号ロの総務省令で定める発信者情報」を規定したものであり、1号ロのないイ号限定型はもちろん、1号のない2号限定型の提供命令には適用されないからである。

ということで、発信者情報目録には、非ログイン型なら施行規則2条5号~8号+14号、ログイン型なら施行規則2条9号~14号を記載しておけば良い。
(1号~4号を書かないのは、提供命令の保全の必要がないため。)

ただし、IPアドレスとタイムスタンプは、第1事件の相手方(本設問ではGoogle)から提供命令により提供されたものなので、その旨の明示も必要となる。

当事者目録は?

当事者目録には、相手方(設問の場合はKDDI)だけでなく、「他の開示関係役務提供者」も書いておく必要があるだろう(設問の場合はソネット)。

当事者目録に、申立人、相手方、以外の第三者がいても別に困らないのか、困るのか、これも9部に判断してもらう必要がある。当事者目録に書いてはいけないのなら、発信者情報目録に書いておけばよいだろう。

発令されるか?

この記事を書いている時点で、私が2号限定型の提供命令申立をしたのは、すでに3件目である。こんな短期間に3件あるということは、これからも生じる可能性のある事例だと思う。
(なお1件目は、裁判外の情報交換により処理されたため提供命令申立ては取り下げた)

ということで、2号限定型提供命令のサンプルを作っておくことにした。

テンプレ保管庫はこちら。(2号限定型提供命令は、書式n21-3 n21-4 n22-3 n22-4)

どうやら発令される

主文目録に、直接「他の開示関係役務提供者」の名前を書くよう指示されたので、テンプレ変更。
当事者目録から「他の開示関係役務提供者」を取って、提供命令の主文目録に入れる。

以下、発令された主文目録。

もう1つも発令。


  • 2023/02/09 作成
  • 2023/02/14 追記
  • 2023/02/17 発令されたものを追加