弁護士を使った風評被害・誹謗中傷対策(総論)

2011.01.09

 このブログでは,ネット掲示板(特に2ちゃんねる)やブログ,クチコミサイト等での風評被害,誹謗中傷対策について各種書いていますが,今回は,弁護士を使う場合,ネットの風評被害対策,誹謗中傷対策は何ができるのか? という総論記事をまとめてみます。


1 誹謗中傷記事の削除

(1) 掲示板管理者,ブログ管理者への削除請求

1-1 サイト管理者が分かる場合

 サイトの管理者を探して,メールなり,内容証明郵便なり,テレサの送信防止措置請求書なりで,削除請求を出します。
 サイト管理者との交渉が生じますので,この請求を弁護士以外の誹謗中傷対策業者さんがすると,非弁活動(弁護士法72条)として規制の対象になる可能性があります。
 削除ボタンを押すだけだったり,削除スクリプトが自動処理するようなサイトでは,交渉の余地がないため,業者さんに依頼できるケースがあるかもしれません。

1-2 サイト管理者が分からない場合

 サイト内にサイト管理者の連絡先が書かれていなかったり,削除システムが用意されていない場合は,ドメインの登録者あてに上記の削除請求を送ります。
 ドメインの登録者がプライバシープロキシーで遮蔽されている場合は,代行業者に弁護士会から23条照会という照会書を出して,ドメイン登録者を回答してもらいます。
 個人情報保護を理由に回答を拒否する業者に対しても,答えてもらう方法はあると考えています。
 回答内容の登録住所が虚偽でも,電話番号が正しければ,弁護士会照会で正しい住所が判明することもあります。

(2) サーバー管理会社への削除請求

 サイト管理者が分からない場合は,サイトのIPアドレスからサーバー管理会社または回線提供会社を判断して,そちらに削除要請を出します。

(3) 裁判所での削除仮処分

 任意で消してくれない場合や急ぐ場合は,裁判所に「削除仮処分」を申し立てます。
 サイト管理者やサーバー管理会社に裁判所へ来てもらい,いろいろ話を聞くことができます。「仮」の削除処分なので,裁判所の結論も早く出ます。
 この申立で和解が成立して削除してくれることも多いので,本案訴訟(削除訴訟)は,とりあえず予定していません。“保全(仮差押,仮処分)は本案訴訟が必須だ”というネットの意見もありますが,実務はそういう運用ではありません。和解が成立せず,保全執行(強制執行)で削除してもらった場合は,そのあと削除訴訟をします。
 ただし,裁判所の決定後に和解してもらえることもあるので,必ずしも訴訟になるわけではありません。
 なお,削除仮処分は訴額の関係で,司法書士さんには扱えない分野です。

(4) 業者さんを使う場合の注意点

 風評被害対策の業者さんを使う場合は,上記の非弁活動のほか,いわゆる掲示板の埋め立てサービスにも注意が必要です。短期間に多くの無意味な投稿をして掲示板を埋め立てる行為は,場合によっては刑法の業務妨害罪にあたる可能性があり,埋め立てを指示すると,業務妨害罪の教唆罪となるリスクがあります。つまり,同罪です。
 警察が事情聴取に来た場合は,“自分の名誉権を守るため仕方なくやったのだ”と,正当防衛,緊急避難を主張できる可能性は,あるかもしれません。


2 誹謗中傷記事の投稿者を調べる

(1) 掲示板管理者へのIP開示要請

 まず,掲示板やブログの運営会社に対し,誹謗中傷記事のIPアドレスを開示請求します。
 方法は,テレサの発信者情報開示請求書か,裁判所のIP開示仮処分です。弁護士会照会や内容証明郵便でIPアドレスを出してくれるところもあります。

(2) 経由プロバイダ,接続プロバイダへの住所氏名開示要請

 IPアドレスが分かったら,そのIPアドレスの所有者である経由プロバイダ,接続プロバイダに対し,投稿者の住所氏名の開示請求をします。
 方法は,テレサの発信者情報開示請求書か,発信者情報開示請求訴訟です。前提として,ログ消去禁止仮処分を入れることもあります。
 仮処分,訴訟をする場合は,どうしてそのIPアドレスがその業者なのか?を裁判官に説明する必要があるため,whoisかnslookupの結果を文書化しておきます。
  開示請求訴訟ではなく,開示仮処分という方法もありますが,開示仮処分で住所氏名の開示を求めても,たいていは認められません。そのプロバイダが接続プロバイダではなく経由プロバイダの場合は,接続プロバイダを教えてもらえるケースはあります。
 開示請求訴訟は,一般的な訴訟と違って,比較的早く終わります。

(3) 投稿者に対する通知

 プロバイダは投稿者に対し,開示してよいか等を確認する手続を取ります。
 プロバイダにテレサの開示請求書を送ると,投稿者に「住所氏名を開示して良いか?」という通知が行きますので,最終的に開示されなくても,そこで抑止力が生じる場合もあります。


3 投稿者への請求

(1) 投稿禁止仮処分

 もう二度と書くな,という内容の仮処分を求める方法もあります。

(2) 損害賠償請求

 名誉毀損(名誉権侵害)を理由とした,慰謝料請求です。
 方法は,内容証明郵便あたりからはじめて,最終的には慰謝料請求訴訟になるでしょう。
 もし,業者さんが投稿者を探し出しても,損害賠償請求の交渉は,業者さんに依頼してはいけません。また,行政書士さんに内容証明郵便を頼むのも法律上できません。

(3) 刑事告訴

 名誉毀損,業務妨害などの犯罪であれば,刑事告訴をすることもできます。ただし,警察の対応は事案によります。


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