どの法人を相手にするのか
Amazonに削除・開示仮処分を申し立てる場合、どの法人を債務者とするかが問題となります。2015年6月23日の「Amazon.co.jp 利用規約」には「Amazon.com Int’l Sales, Inc.」がサイト運営者だと書かれていましたが、2020年4月4日版の「Amazon.co.jp利用規約」には、「サイト運営者 Amazon Services LLC」との記載があります。
他方で、2020年6月18日版「特商法の表示」には、「販売業者」が「アマゾンジャパン合同会社」だと書かれています。
ということで、原則論を貫けば「Amazon Services LLC」なのでしょうが、実際には、「アマゾンジャパン合同会社」を債務者にすれば削除・開示対応されるという運用になっています。
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仮処分の手続
アマゾンジャパン合同会社に対する仮処分を申し立てると、日本の弁護士が代理人として選任され、対応してくれるため、一般的な日本のサイト管理者を相手とする仮処分と同じように手続を進めることができます。
レビューは「モノ」の評価
問題は、何の違法性を主張するかにあります。商標権侵害、著作権侵害などの知財に関するものは別として、名誉毀損(人格権侵害)を主張する場合には、レビューが「モノ」に関する評価だという点に注意が必要です。
たとえば、「買う価値のない本」といったレビューは商品の評価は下げていますが、著者の人格については何も言っていません。この場合、名誉権侵害を理由とする削除、開示請求は難しいということになります。
これに対し、「この著者はキチ○○であり、買うに値しない」くらいの表現があれば、著者の人格が攻撃されているため、名誉毀損を理由とする削除、開示が視野に入ってきます。同様に、「広告にはAAと書いてあるが、実際にはBBだった」のように、広告の記載に虚偽があるという指摘であれば、「虚偽広告をする販売会社だ」という人(法人)に対する評価になるため、削除、開示の理由となります。
業務妨害の主張は実際には難しい
業務妨害を理由とする削除請求はできません。なぜなら、業務妨害は人格権侵害ではなく営業権侵害のため、人格権侵害差止請求権の前提要件を満たさないためです。
他方で、業務妨害を理由とする開示請求はできると考えられています。ただし、どんなレビューなら業務妨害になるのかについて、明確な判断基準を定めた法律はなく、判例でも明確ではありません。少なくとも、刑法上の業務妨害罪になるようなレビューであれば、営業権侵害を主張して開示請求できると思われます。