住所氏名の開示仮処分

2010.08.25

インターネット事件の訴訟,仮処分で,管轄がどこの裁判所にあるか,という問題です。
東京地裁民事9部の最近の運用は
不法行為地は結果発生地も含むので,被害者が画面を見た場所に管轄がある,ということらしいです。
以前は,そこまで明確には言われなかったのですが

これを前提に検討すると
削除請求は,不法行為に基く,ということでよいのでしょう。
次に,発信者情報開示請求も,条文上それらしい要件があるので,よいのでしょう。
東京に本社のあるプロバイダに対して,日本全国で訴訟ができます。
では,ログ保存請求は,不法行為に基づく,請求なんでしょうか。

先日,ログ保存請求が不法行為地の裁判籍で受理されたのですが,要検討です。

2ちゃんねる関連で,東京地裁(本庁)以外のもの
いずれもパケットモンスター相手で,削除だけ,またはIP開示請求付き
  • 横浜地裁平成21年(ワ)第2175号
  • 大阪地裁平成22年(ヨ)第1440号
  • 東京地裁立川支部平成22年(ヨ)第226号
  • 名古屋地裁岡崎支部平成22年(ヨ)第82号
  • 神戸地方裁判所平成22年(ヨ)第346号

 地方に本社のあるプロバイダに対し,東京地裁で発信者情報開示請求訴訟を提起した件,受理され,終結しました。

2011/4/20追記
 最近,不法行為地では発信者情報開示の管轄が取れなかった,という話をよく聞くようになりました。
いちど,最高裁に判断してもらいたいものです。

2011/5/7追記
 地方に本社のあるMVNOに対し,東京地裁で発信者情報開示請求訴訟を提起したところ,受理され期日が決まりました。訴訟だと管轄上申だけで受理される感触。答弁書が出てくれば,応訴管轄になるから問題は小さいのでしょう。
2013/3/6追記
 文献を,とのコメントがありましたので1つ上げておきます。
東京地裁H17.1.31決定(判タ1191号339頁)は,「この「不法行為があった地」には、不法行為が行われた地のほか、不法行為の結果が発生した地も含まれる。しかるに、申立人は、インターネットを通じて、我が国のみならず世界中に相手方の商標権の侵害行為を行っているのであって、申立人の標章が付された画面を東京都内で見ることができるが、これは不法行為の結果に当たるものである。」としています。
IBM対ソフトバンクBB(東京地裁平成21年ヨ第508号)で住所氏名の開示仮処分が認められているということで
自分も申し立ててみました。

債権者面接と双方審尋で裁判官の話を聞いてみて
やはりポイントは,どれだけ緊急性があるか,“いま”住所氏名を開示すべき必要があるのか,という保全の必要にかかっていると思いました。
上記の仮処分は例外中の例外らしいです。
とりあえずセオリーどおり,ログ保存の仮処分だけ和解で終了。


以下 2010/10/25追記

某スレッドで,私を?「ぶっ殺す」と書いたレスがあったので,
殺人予告として住所氏名の開示仮処分を申し立ててみました。
しかし,「緊急性や切迫性が疎明されていない」として,決定を出すのは難しいと言われました
殺人予告でも,住所氏名の開示仮処分は認められない。
通信の秘密はハードルが高いです。
やっぱり,殺人予告は警察に相談ですね。

以下,2010/10/27追記

経由プロバイダの次も経由プロバイダだと言われた場合は,第1段目の経由プロバイダに開示訴訟をやっていると,第2段目の経由プロバイダのログがなくなってしまうわけです。
というわけで,経由プロバイダの次も経由プロバイダの場合には,住所・名称の開示仮処分を申し立てます。
これは,決定をもらえました。
殺人予告より,プロバイダのログがなくなる,という理由の方が強いわけで。

以下 2010/12/4追記

開示仮処分がとおらなくても,テレサの開示請求書は渡しておくので,そっちの手続きで開示されることもあります。弁護士会照会で開示してくれるプロバイダもあり,訴訟しないとダメという強硬なところもあり,開示に必要な手続き,期間はプロバイダによって異なりますね。
2014/1/28追記
テクノロジーネットワークス社に対し,どこのJCOMが顧客情報を持っているのか開示せよ,という仮処分が認められました。
MVNOとMNOの関係は,JCOMとテクノロジーネットワークス社の関係と似ているのではないか,という主張をしています。