ログ保存の仮処分

2010.11.20

ログ保存の仮処分

 掲示板やブログの管理者からIPアドレスの開示を受けたら,次にすべきことはアクセスログ保存の仮処分。発信者情報消去禁止の仮処分ともいう。
 これをしないと,接続プロバイダ・経由プロバイダのアクセスログが一定期間経過後に削除されてしまう。
 あまり具体的な数字は書けないので抽象的に書いておくと,無線系のインフラを持っている会社で3か月,有線系で6か月。
 プロバイダによっては,電話一本で保存してくれるところもあると聞いたが,電話して拒絶されたら面倒だし,疎明資料を送れと言われたら,結局,仮処分の疎明資料を送るのと手間的に変わらない。
 また,「保存しました」と言われて安心していたら,実は保存されていなかったということになると,弁護過誤にもなりかねない。
 そのため,原則としてログ保存の仮処分を申し立てている。

ログ保存仮処分の手続

 東京地裁保全部のテンプレートによると,主文は「債務者は,別紙発信者情報目録記載の各情報を消去してはならない。」らしい。
 審尋期日には,出席するプロバイダ(代理人)がほとんどではあるが,一部に,まったく出てこないプロバイダもある。
 出てこないプロバイダと,某無線系プロバイダは,ログ保存の和解ができないため,担保決定(10万)→供託,の手続が必要となる。

MVNOなど

 通常は,プロバイダに対して「ログを保存せよ」と申し立てるだけで済むが,MVNOなど,そのプロバイダが投稿者の契約情報を持っていないケースもある。
 たとえば,投稿者の使った接続プロバイダだと思って申立をしたら,接続プロバイダと掲示板を中継している経由プロバイダだったりもする。
 そんなときは,急きょ,申立の趣旨を変更して,ログ保存の仮処分から,(次の)プロバイダ名の開示仮処分に切り替えないといけない。
 そのため,最初から「保存すべき情報が投稿者のものでない場合は保存だけでなく開示もせよ」という申立をする場合もある。

投稿用URL

 ドコモ等,一部のプロバイダに対してログ保存の仮処分申立をする場合に,ハードルとなるのが「投稿用URL」。
 これは,投稿内容を閲覧するための閲覧用URLとは別のアドレスであり,画面を見ているだけでは判明しない場合もある。
 投稿用URLは,HTMLソースを表示すれば分かることがある。formタグのactionパラメータのところにURLが書いてあれば,それが投稿用URLである可能性が高い。
 ただし,知恵袋は端末ごとにactionパラメータの内容が違うようなので,要注意である。


2012/04/11 加筆
2014/1/28追記
テクノロジーネットワークス社に対し,どこのJCOMが顧客情報を持っているのか開示せよ,という仮処分が認められました。
MVNOとMNOの関係は,JCOMとテクノロジーネットワークス社の関係と似ているのではないか,という主張をしています。