削除請求
ツイッターの削除請求には、任意削除請求の方法と、裁判所を使った削除請求(削除仮処分)の方法とがあります。任意削除請求が認められると、アカウントの凍結といった対応が取られます。
もっとも、任意削除に応じるかどうかはTwitterの判断に委ねられているため、思いどおりに削除されないことも珍しくありません。
削除仮処分による削除は,違法なツイートだけが削除対象になります。例外的に,アカウント全体の削除仮処分を申立てた結果として,アカウントが凍結された例もありました。
削除仮処分の流れ
削除仮処分は、東京地裁または、住所地を管轄する地方裁判所で(たとえば、大阪在住であれば大阪地裁)削除仮処分の申立をして、認められれば早くて申立てから3~5週間ほどで削除されます。
実は「削除」ではない
ツイッターに対する削除仮処分をもらい「削除」してもらっても、それは実は「削除」ではないことがあります。「This Tweet from @Screen_Name has been withheld in Japan in response to a legal demand.」と表示されているときは、「日本で」見えなくしているだけで、海外では見えます。
これにより1つ問題が生じます。グーグルのクローラーは米国籍のため、日本で見ていることにはならず、「削除」されたはずの情報を取り込んでしまいます。そしてグーグルの検索結果には、「削除」されたはずのツイートが表示されます。そのため、検索結果の削除請求も実施する必要が生じます。
発信者情報開示請求
ツイッターの投稿者については,ログインする際に使われたIPアドレスの開示請求をします。この法的措置(発信者情報開示仮処分)は,必ず東京地裁ですることになっています。
東京地裁では、削除とIPアドレスの開示請求を1つの手続で実施できます(削除・開示仮処分)。
IPアドレスはログインIPアドレスなので、住所氏名の開示請求訴訟では、「問題のツイートの直前にあるログインIPアドレス」が開示請求の対象になるという解釈が、現在の裁判所の半分くらいを占めています。残り半分は「同一人物」なら開示してよいと考えているようです。万全を期すなら、ツイート直前のログインIPアドレスの開示を目指すべきでしょう。
改正プロ責法5条3項で「侵害関連通信」が定義されましたが、従前の運用は変わらないと考えられます。
そのため、ツイッターに対するIPアドレス開示仮処分は、時間との戦いです。投稿者がログ保存期間3か月のプロバイダを使っている場合には、ツイートからIPアドレス開示仮処分を申し立てるまでの猶予期間は4週間ほどしかありません。
いつまでに申し立てなければならないかを計算できるページを用意しました(JavaScriptが動かないブラウザでは実行できません)(こちらの記事は、外国会社の登記を前提にしていません)。
IPアドレス開示仮処分の流れ
Twitterからのメール(請求者あて)
Twitterからのメールの差出人は、Twitter Support <support@twitter.com>、メールのタイトルには、「Twitter Response to Legal Process」という文字列が含まれています。間違って迷惑メールフォルダなどに振り分けられないようにしておきましょう。
このメールの中に、開示情報のダウンロードページへのリンクが記載されています。リンクは1つしかないと、ずっと思っていましたが、2つ(以上)あるケースもあるようなので、要注意です。開示情報が足りないと思ったら、リンクを開き忘れていないか確認しましょう。
Twitterからのメール(投稿者あて)
開示決定が出ると、対象のアカウント保有者あてにも決定から1週間ほどでメールが届きます。差出人は、Twitter Legal<twitter-legal@twitter.com>、文面としては、「法的文書を受領しました」になっていますが、要するに開示決定が出たので開示しますよというものです。
開示されるIPアドレスの特徴
ツイッターから開示されるIPアドレスは,「ログイン時IPアドレス」です。仮処分決定がTwitter代理人に送達され,米国で開示用のファイルが作られた日からさかのぼって60日分のログイン情報が開示されているように見えます。
東京地裁では,ツイート直前のログインIPアドレスでしか住所氏名の開示請求を認めていないものが半分くらいあるため,ツイート日から開示決定までの期間が60日以上あると,住所氏名の開示訴訟は請求棄却になるリスクが高まります。
開示されるタイムスタンプはUTC+0なので、一般に、発信者情報開示請求をするには、UTC+9(日本標準時)に変換する必要があります。
たとえば、現在のフォーマットでは以下のようなブロックが1つの塊で、これが複数連なっています。使うところは、createdAtの値とloginIpの値で、前者が接続日時(UTC)、後者がログイン時IPアドレスです。
IPアドレスは、逆引きしてホスト名(FQDN)に変換するほうが、どこのプロバイダのIPアドレスなのか分かりやすいと思います。
{
”ipAudit” : {
”accountId” : “1100000000”,
”createdAt” : “2020-01-01T12:00:30.000Z”,
”loginIp” : “126.160.80.110”
}
},
最近、開示されたIPアドレスの中に、amazon AWSや、microsoft、googleのIPアドレスが散見され、これは何かと裁判官に聞かれる事例が増えました。発信者情報開示の相手はそれらの企業ではないかとも質問されますが、おそらくソーシャルログインのIPアドレスだと考えています。詳しくは別記事で。
Twitterから開示されるファイルの中には多いと100~200個のIPアドレスが入っているため、上記の作業は大変に手間がかかります。そこで、Twitter発信者情報開示ファイルからIPアドレスを抜き出して、ホスト名に変換+日本時間に変換してエクセル表にするツールを公開していますので、こちらも使ってみてください。
住所氏名の開示訴訟の流れ
IPアドレスが開示されたあとは、プロバイダを調べ、プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟をします。
提訴から3~6か月程度で、勝訴していれば、投稿者の住所氏名が開示されます。
Twitterに対する開示訴訟
IPアドレスから辿る方法では投稿者を特定できなかったとき(ログ保存期間が切れていたなど)は,Twitterに対する開示訴訟という方法が残っています。Twitterは外国会社の登記をしているため、日本法人相手の訴訟と同じくらいの期間で判決に至ります(3~6か月程度)。Twitterアカウントに登録されているメールアドレスと,2段階認証の携帯電話番号を開示できる可能性があります。
料金
受任内容 | 着手金(税込) | 成功報酬 |
---|---|---|
削除仮処分 | 300,000 | 設定なし |
IPアドレス開示仮処分 | 300,000 | 設定なし |
削除+IPアドレス開示仮処分(東京地裁のみ) | 300,000 | 設定なし |
出廷日当(東京地裁以外、1回あたり) | 3~5万円 |
- 2015/04/05 作成
- 2020/05/12 ~ 9/28 更新
- 2021/03/15 更新
- 2021/04/20 更新
- 2021/06/03 追記(呼出がEMSに戻った/発信者情報開示ファイル変換ツール)
- 2021/08/09 追記(ソーシャルログインについて)
- 2022/09/02 外国会社登記に対応